新型コロナウイルス感染症予防として、トイレ後の手洗いはとても重要です。
トイレでは、ドアノブ、手すり、スイッチ、ふた、便座、洗浄レバー・ボタン、トイレットペーパーホルダー、蛇口等、手に触れる部分を消毒するなどして、衛生を保つことが必要です。
感染症予防の手洗いの目的は、手指に付着しているかもしれないウイルスを落とすことです。目に見える汚れはもちろんのこと、日常生活において一時的に皮脂膜にくっついた菌(皮膚通過細菌)も落とすことが大事です。手洗い方法は厚生労働省をはじめとして、様々な資料が公開されていますし、以前に記事を書きましたので、そちらを参考にしていただくとして、今回、とりあげるのは「石けん」です。
感染予防としての石けん選びについて、伊与亨氏(北里大学 医療衛生学部 公衆衛生学研究室)に話を聞きました。以下、その内容をご紹介します。
石けん選びのポイントは?
加藤 トイレ後に手を洗う際の石けん選びのポイントを教えてください。
伊与 石けんにはウイルスなどの病原体を泡で包み込んで皮膚から剥がす作用があります。ただし、水に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオンの量が多くなると、石けんの成分と反応して泡立ちが悪くなります。通常の水道水を使っていればそのような心配はありませんが。よく、温泉で石けんの泡立ちが悪くなるのは、このためです。
石けんには、固形石けんと液体石けんがあります。固形石けんを濡れたまま置いておくと、水に溶けやすい泡立ち成分が溶け出してしまいます。このため、使用後は水を切っておくなどの工夫が必要です。液体石けんとしては、ポンプ式のものが良く販売されています。1回押すと手洗いに必要な量の液体石けんが出てきますので便利です。
固形石けんや液体石けんのどちらを選ぶかは、石けんを使用する現場での使い勝手を考えて選べば良いでしょう。
感染症対策は液体石けんがいいの?
加藤 感染対策に関する資料には「液体石けん」と記載されていることが多いように感じます。その理由は何でしょうか?
伊与 固形石けんですと、その大きさが小さくなると泡立ちが悪くなります。また、石けんを他人と供用する場所で固形石けんを使った場合、石けん表面には前に使った人の「影響」が残ります。もちろん、水で流しながら固形石けんを泡立てればその「影響」は無くなります。
一方、ポンプ式の液体石けんですと、出す度に新しい石けん液が供給され、通常、ボトル内の液体石けんが、前の使用者の「影響」を受けることはありません。そのため、感染症予防を主目的とする場合は、基本的に液体石けんとなります。なお、石けんを他人と供用しない個人のお宅などで固形石けんを使うことに、何の問題もありません。固形石けんが液体石けんよりも悪いと誤解されないよう、お願いします。
液体石けんのボトルの中で菌は繁殖する?
加藤 液体石けんのボトルの中で菌が繁殖したことがあると、聞いたことがあります。そうならないようにするための注意点を教えてください。
伊与 使用時に、液体石けんの吐出口に触れないことに注意して下さい。そこに触れるということは、微生物が吐出孔からボトル内部に遡上する可能性を作ってしまいます。可能性はかなり低いと思いますが、用心するに超したことはないでしょう。また、詰め替え時に、継ぎ足してはいけません。
ポンプを外したボトルの中・外を水道水で良く洗い、水気を切ります。次に、ポンプの吸込み口にも水道水を当て、ポンプの頭を押しながらポンプ内部の液体石けんが残らないように洗い、最後にポンプの外側も洗って、しっかりと水気を切ります。
なお、その後、ポンプ・ボトルを乾燥させるか否かですが、石けんメーカーのサイトをみるとそこまでは必要ないでしょう。もちろん、やって悪いというわけではありません。このように洗浄・水気切りをしてから、詰め替え用の製品をボトルの中に入れ、ポンプとボトルを接続します。
石けんがなければ、ボディソープでもよい?
加藤 最近は、液体石けんも品不足になっています。液体石けんがない場合、ボディソープやシャンプーで手洗いしても効果は同じでしょうか?
伊与 ボディソープ、シャンプーしか無いようでしたら、それらで手洗いをするしかないでしょう。ボディソープのボディに手指は含まれますので代用品としての効果は十分に考えられますが、シャンプーは頭髪専用なので少し悩むところです。ただ、代用品としてそれなりの効果はあると推測します。
といいますのは、石けんを使わず、流水での手洗いだけでも、15秒程度しっかりとやれば、残存するウイルスの数を100分の1になるという科学的なデータがあります。ボディソープにしろ、シャンプーにしろ、界面活性剤が入っていれば、洗浄効果は流水のみ以上となることが予想されます。このデータでは、ハンドソープを使った衛生的な手洗いで、ウイルスの数が10万分の1以下になるとも報告しています。
加藤 ありがとうございました。
今回、教えて頂いたことをまとめると、以下のようになります。
感染症予防としての石けんの使い方のまとめ
1.感染症予防としては、液体石けんの方が使いやすい
2.石けんの泡には病原体を包み込む作用がある
3.液体石けんは継ぎ足し禁止( 詰め替え時は、容器をしっかり洗浄して水気を取る)
4.他人と供用する場所で固形石けんを使った場合、水で流しながら固形石けんを泡立てる
5.界面活性剤が入っているボディーソープは代用品としての効果は十分に考えられる
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April 16, 2020 at 10:35AM
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感染症予防 手洗い石けんは固形、それとも液体?(加藤篤) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース
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