三菱総合研究所の政策・経済研究センター長に聞く
日本企業は適切な人事戦略を運用できているのか。写真はイメージ(撮影:尾形文繁)
日本の潜在成長率は低迷を続けている。その原因の1つにTFP(全要素生産性)の寄与度が低く、イノベーションの力が落ちていることが指摘されている。
日本の社会的課題の分析・提言を行っている三菱総合研究所の政策・経済センター長、武田洋子氏に聞いた。
――日本の潜在成長率は1990年ごろをピークに低下し、2000年代には低迷を続けています。賃金も諸外国に比べて低く抑えられたままで、消費も低迷しています。今後、どのような改革が必要でしょうか。
突き詰めて考えると2つの問題があるだろう。1つは労働市場の問題、これが2つめの企業の新陳代謝が進まないことともつながっている。
コロナ危機の前に日本の労働市場の課題として2つのことが言われていた。1つは人口動態の面から労働者不足が加速するというもの、もう1つはAI(人工知能)等の技術が進展して雇用が奪われるというもの。
2つは矛盾する話なので、どちらの可能性が高いのか、実際に技術が労働需要にどの程度の影響を及ぼすのか、分析してみた。
――結果はどうでしたか?
労働供給が減るペースと需要が減るペースを比べてみたところ、2021年までは労働不足が拡大し、その後は需要減少によって徐々に解消していくがバランスが取れるのは2028年ごろという結論だった。
ところが、コロナ禍でデジタル化は前倒しで進展しており、現状では2020年代半ばごろにはバランスの状況に近づくという見通しに修正されている。
いずれにしても、人口減はむしろAIやデジタル技術の普及を促進する、あるいはAIやデジタル技術の活用を進めることは脅威というより、労働力の不足を補ってくれるという結果だ。
ただし、問題は中身で定型的な事務仕事は減る一方で、デジタルでビジネスを作るような専門人材、イノベーターは不足するだろう。
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