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Sunday, January 31, 2021

成長が緩やかな精神障がい者の育成に必要な条件 - 『日本の人事部』プロフェッショナルコラム - 日本の人事部

2018年に精神障がい者が法定雇用率の算定基準に入ったこともあり、精神障がい者
の雇用は着実に進んでいます。

そのような中、まずは安定的に雇用継続できるよう配慮し、職場定着を目下の目標
として取り組まれている企業は多くあります。しかし、なんとなく定着はしている
ものの、採用当初に任せた業務以外のことを任せることは難しい、任せようにも、
体調不良になってしまうのがこわい、という声を聞くことがあります。
精神障がい者は、症状の波があることに加え症状自体もさまざまなので、発現の契
機や程度が分かりにくく、以前はできていた業務が難しくなっていたり、変化に敏
感でなかなか適応できなかったりと、業務内容の展開を図ることが難しいことがあ
ります。

精神障がいのある社員と接する管理職からは、下記のような話を聞くことがあります。

・入社して数年経ち、業務にも慣れたこともあり、これまでの業務とは違う業務を
任せてみたところ、パフォーマンスが下がった
・はじめに与えた仕事をしっかりこなせるようになってきたため別の仕事を頼んだ
ところ、これは自分の仕事ではない/自分にはできない、と受け入れられなかった
・職場での信頼も得られてきたため、大きめの仕事を任せたら、何故かやや攻撃的
なコミュニケーションをとるようになった
・理解や関係構築に時間がかかることもあるため、健常者向けの育成研修に加える
ことが難しい

業務内容の展開や育成を難しくしている、精神障がい者に多く見られる特性としては、

・想像のしにくさ
・気分や体調の波
・自信のなさ、健常社員のなかでの孤独感

などがあげられます。

通常、健常者の育成であれば、必要なスキルや知識を学ぶ、上長の助言を受ける、
業務経験を積むなどにより可能です。
それに対して、精神障がい者の場合はその前段階として、障がい特性を補うような
トレーニングを行うことにより、育成の効果を得やすくすることができます。
上記の、想像のしにくさという障がい特性に対しては、「環境に合わせて行動や
意識を変えて適応する力を高める」トレーニングがあります。

例えば、

1.ネガティブ感情をもった時に、状況とそれについてどう思ったかその都度メモ
をとる
2.この自分の感じたことの根拠と、その根拠への反証を考える
3.視点を変え、もし違う人/時ならどう感じたかを考える

など、自分のなかに自然と浮かんだ考えを見直してみる方法があります。

このような作業を繰り返すことで、物事に対する新しい考え方をもつことができ、
新たなことを学ぶ土台ができていきます。
この他にも、それぞれの障がい特性により、効果的なトレーニングの内容は異なり
ます。

今回紹介した、適応力を高めるトレーニングを行わないまま精神障がい者のステッ
プアップを図ると、業務または他者とのコミュニケーションをネガティブに捉えて
イライラしたり、本人のなかに不満が募ったりします。
また、この方法を知っておくことにより、気分の波が起きた時、大きく体調を崩し
たり、それを長引かせたりすることなく持ち直すこともできます。

このトレーニングの主題は自分にない考え方を吸収することであるため、精神障が
い者本人がひとりで行おうとしても、行き詰ってしまうことが多くあります。
そのため、精神障がいについて知識/理解のある心理の専門家を活用することで、
本人の気分の波や症状の変化にも配慮しながら、安定的に進めることができるでしょう。

参照:『障害者の就業状況等に関する調査研究』 (2017年、JEED)


(アソシエイトコラボレーター 種市 冴美)

※コメントのほか、ニックネーム、業種、所在地(都道府県まで)がサイト上に公開されます。

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