新型コロナウイルスの感染拡大で、本来介護サービスを受けるべき人が受けていないという事態が広がるおそれがあります。
サービスを受けるために必要な「要介護認定」の申請数が各地で減っていることが分かり、自治体では「感染予防のため申請を控えている人が多いと考えられるが、暫定的にサービスを利用できる制度もあるので、必要な人は申請してほしい」と呼びかけています。
「要介護認定」は、介護保険でサービスを受ける必要性を判断するもので、市区町村の認定調査員が原則、対面で聞き取り調査などを行います。
先月の「要介護認定」の新規の申請数について、NHKが東京23区に取材したところ、21の区で去年の同じ時期に比べて減少していることが分かりました。
このうち足立区では、先月の申請数が716件と去年より112件減ったほか、練馬区でも578件と110件少なくなっていて、緊急事態宣言が出された今月はさらに減少幅が大きく、半分ほどになる見通しだということです。
外出自粛によって家にいる時間が増えると、高齢者は運動機能や認知機能が一気に低下するおそれがありますが、各自治体では「感染予防のため申請を控えている人が多いのではないか」とみています。
一方で、サービスが必要か調査する側も、感染リスクを考えて思うように調査できないという影響も出ているということです。
ただ、「要介護認定」の申請を行えば、認定前の段階でも暫定的にサービスを利用できる制度があり、申請は郵送でも受け付けているということで、自治体では必要な人は申請してほしいと呼びかけています。
新型コロナウイルスの感染拡大で、地域の人と交流しながら相談や支援にあたる民生委員は、対面での活動の自粛を余儀なくされていて、長期化すると高齢者の変化を見逃してしまうおそれがあると懸念する声が上がっています。
およそ80人の民生委員がいる東京・昭島市の代表会長、日惠野裕之さんは、高齢者の自宅を訪ねて生活で困っていることや心身の状態などを確認し、必要に応じて要介護認定の申請を勧めたり、行政などの相談先を仲介したりしてきました。
ところが、民生委員や児童委員の全国組織「全国民生委員児童委員連合会」は、感染予防のため電話やメールなどでの活動を検討するよう通知していて、昭島市の民生委員も緊急性がある場合を除き、訪問による活動を自粛しています。
また、昭島市は来月から始める予定だった、主に70歳を迎えた人を対象に対面で行う「高齢者実態調査」の延期を決めました。
民生委員はこの調査を委託されていて、日惠野さんは自粛が長期化することで、対面だからこそ把握できた高齢者の状態の変化を見落としてしまわないかと心配しています。
日惠野さんは「調査用紙だけでは分からない困りごとを確認したり、助けが必要な人の情報を把握したりできるので、今の状況には不安がいっぱいだ」と話しています。
昭島市では今月22日に、市の担当者と地区の民生委員の代表が集まって現状や今後の活動についての打合せが行われ、この中で参加者からは「家で縮こまっているお年寄りがいるので、電話で近況を確認している」とか「ストレスや筋力の低下の対策につながる情報提供が必要だ」といった意見が相次ぎました。
日惠野さんは「65歳は元気でも70歳になったら車いすというケースもあり、面談調査は必要だが、今年だけは文書にして必要に応じて訪問してはどうか」と述べました。
市の担当者は「高齢者が地域の輪に加わる非常に重要な糸口で、訪問形式は崩す考えはない」と強調しましたが、打ち合わせでは実施の時期について結論が出ませんでした。
このあと日惠野さんは地域を見回り、足が悪く気にかけている一人暮らしの80代の女性に声をかけ、雑談したり「心配ごとはないですか」などと尋ねたりしていました。
日惠野さんは「不安に思っている高齢者が多いと思うが、電話では声は分かっても体の状態などは分かりづらい。こうした状況は初めてだが、みんなで知恵を絞って活動していきたい」と話しています。
東京・練馬区では、先月の要介護認定の申請数が578件と去年の同じ時期より110件減りました。
練馬区介護保険課の風間康子課長は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、相談を含めて自粛しているのではないかと考えていて、去年の申請状況と比較して対策を検討していくことにしています。
風間課長によりますと、外出自粛などの現在の生活環境は運動機能や認知機能の低下につながり、高齢者にとってはいい状況ではないということです。
こうした中、要介護認定の申請が減少し、このままでは必要とする人が介護サービスを利用できない状況に陥ってしまうとして、風間課長は「対面でなくても申請は郵送ででき、申請すれば認定されるまで暫定的にサービスも利用できます。地域包括支援センターも開設しているので悩みがあれば気軽に相談してほしい」と話しています。
新型コロナウイルスの感染拡大で都内の自治体では、介護サービスを受けるために必要な「要介護認定」の調査を延期せざるをえなくなるなど、影響が出ているところもあります。
「要介護認定」は、介護保険でサービスを受ける必要性を判断するもので、市区町村は申請を受けたあと、高齢者の心身の状況について自宅や病院などで聞き取り調査などを行います。
このうち東京・板橋区では、感染拡大を受けて面会を禁止している病院や高齢者施設があり、調査を延期せざるをえないケースが先月中旬以降、およそ20件あったということです。
また、東京・北区では、通常は30分から45分ほどかかる調査時間をできるだけ短くしたり、ほかの入院患者や医療関係者との接触を減らすため、病室以外の部屋で調査を行うなどの対応を取っているということです。
東京・北区介護保険課の佐藤秀雄課長は「今後さらに感染者が増えれば病院で調査そのものができなくなり、要介護認定がすぐに受けられない高齢者が出てくるおそれがある」と話しています。
要介護認定の新規の申請数が減っていることについて、高齢者の介護に詳しい東洋大学の高野龍昭准教授は「新型コロナウイルスの感染拡大予防で申請の自粛が起きているほか、民生委員などの地域の見守りも減っているので、高齢者の体調変化の兆しをつかみにくくなっている」と話しています。
そのうえで、「外出の自粛や地域の集まりがなくなったことで、運動機能が低下し転倒などのリスクが増えるほか、認知機能の低下が進み、介護者の負担も大きくなるおそれがある。介護サービスを適切に利用することが必要で、介護の分野でもオンラインで申請や認定ができるような仕組みづくりが必要だと思います」と話していました。
また、孤独感が強まると体や心に悪影響が出るとして、「特に一人暮らしの高齢者は注意が必要なので、1日に1回でいいので電話でもオンラインでもインターホン越しにでも連絡を取って自分はひとりではないと感じてもらうことが重要で、地域でそうした見守りの仕組みを作ることが大切だ」と指摘しています。
介護サービスには要介護の認定を受けていなくても、申請すれば暫定的に利用できる制度があります。
介護保険で介護サービスを受けるためには「介護や支援が必要な状態」という認定を受ける必要があり、これが「要介護認定」です。
要介護認定は、各地区の地域包括支援センターや市区町村の窓口で申請を行ったあと、認定調査員が訪問して調査するなどして、7段階ある要介護度のどこに該当するか認定を受けることになります。
申請から認定までには調査や審査などの過程があり、30日程度の時間がかかります。
すぐに介護サービスを利用したい人もいることから、申請後、結果が通知されるまでの間でも暫定的な介護サービスの利用計画「暫定ケアプラン」を作成することで介護サービスを利用することができます。
ただ、認定の結果、要介護度が想定よりも低かった場合や、要介護に該当しなかった場合には、利用料金が自己負担となるため注意が必要です。
一方で、各自治体では「総合事業」として介護予防や生活支援のサービスを提供しているところもあります。
要介護認定の申請や「暫定ケアプラン」の作成なども含めて各地の地域包括支援センターで相談を受け付けています。
また、厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染拡大の予防のためとして今月7日、要介護認定を更新する場合に必要な対面での調査については、面会が困難な場合、有効期間を最大12か月まで延長することができるとして全国に通知を出しています。
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April 26, 2020 at 10:47AM
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要介護認定申請が激減 自粛か|NHK 首都圏のニュース - NHK NEWS WEB
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