2023年7月15日で発売から40周年を迎えた「ファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)」。1000本以上も発売されたファミコンソフトだが、種類の多さから近年ではコレクターの需要が高まり、ファミコンはもちろん、ほかのレトロゲームにも注目が集まっている。中には3Dプレイやオンラインといった近年では当たり前になった仕様が、30年以上前でもすでに実現していた商品が存在していたようだ。そこで今回は、レトロでありながら先鋭的なシステムを搭載したゲームや周辺機器を紹介しよう。
最近では立体的な映像のゲームを体感できる「VRゴーグル」が普及しているが、任天堂は1995年にその原型ともいえる『バーチャルボーイ』を発売。VRゴーグルとは違って本体がゲーム機になっており、スタンドを装着して専用のゲームソフトとコントローラーを差し込み、ゴーグルの中にあるディスプレイを覗き込めばプレイが可能になる。
映像は赤と黒の2色だけで構成しているものの、専用ソフト『マリオズテニス』や『テレロボクサー』などのスポーツゲームを違和感なく立体的な映像で楽しめるのは、当時としては画期的なシステム。しかし、専用ソフトが少ないのに加えて、希望小売価格が1万5000円で高額であったために、全世界販売台数が77万台で大ヒット商品にはならなかった。
『バーチャルボーイ』のようにヒットを逃したゲーム機器といえば『編集ファミコン/ファミコンタイトラー』も見逃せない。同商品は89年に家電機器メーカーのシャープから発売されたファミコン互換機で、ファミコンとビデオ編集機能がかけ合わせられている。編集といっても、できることは基本的にビデオカメラで撮影した映像にタイトルがつけられるだけ。とてもマニアックな機器だったうえに希望小売価格が4万3000円とかなり高額だったのもあり、広くは普及しなかったといわれている。
レトロゲームでも3D映像やビデオ編集が可能だったことは分かったが、実はファミコンで馬券購入や株取引ができたことはご存知だろうか。88年に任天堂が「ファミリーコンピュータ通信アダプタセット」を発売したことによって、一般家庭でも電話回線を介した各ネットサービスが受けられるようになった。
使い方はシンプルで、専用コントローラーやアダプタの本体を差し込み口にセットして電話回線につなげば、後は本体にファミコンのソフトにあたる“通信カートリッジ”を差し込むだけ。このカートリッジにも種類があり、株取引ができる「野村のファミコントレード」や競馬の馬券が買える「JRA-PATカード」などが発売されていた。今から30年以上も前にネットサービスを受けられたと考えると、任天堂には先見の明があったといっても過言ではない。
今見ても驚かされる点が多い“時代を先取りしたレトロゲームたち”。決して過去の挑戦は無駄ではなく、失敗を積み重ねたからこそ、現在のゲームやサービスにつながっているのではないだろうか。
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