PlayStation 5を「リモートプレイ」できるという驚きの機能と、コントローラーを半分に割って画面をつけたようなインパクト抜群なデザインで登場したPlayStation Portalリモートプレーヤー(以下、PS Portal)。
「宅内のPS5を遠隔で操作するリモートプレイ機」というちょっと特殊なコンセプトを持つ本機は、いわゆる「携帯型ゲーム機」とは違って、外出時に持ち運んでゲームを遊べるわけではない。それだけ聞くと、ちょっとピーキーなデバイスじゃないか?と思われる方も多いはず。
今回、電ファミ編集部ではそんなPS Portalの開発者であるSIEグローバル商品企画部の若井宏美氏へインタビューを実施。そこで先のような疑問をお聞きしてみたところ、PS Portalの「具体的な使用シーン」が見えてきた。
例えば寝る前に少しだけPS5のタイトルの続きをプレイしたいとき、各々のリラックスタイムで家族がテレビを使っているとき。そんな、「起きるのめんどくさいなあ」、「あーテレビが使えればなあ」のような、ちょっとした心理的な障壁を取り除いてゲームプレイへのアクセスをよりカジュアルにしてくれるのだ。
つまり、PS Portalは一見ピーキーそうに見えて、しかしそれゆえに痒いところに手が届く、きめ細やかな一台となっている。
本稿では、PS Portalの開発背景や実際のユーザーの声のほか、過去にPSPやPS Vitaなどのポータブルデバイスのプロダクトマネジメントも手がけた若井氏から見た本機について、気になることをぜんぶ聞いてみた。
聞き手/anymo
「高品質なコンソールでのゲーム体験を、プレイヤーの皆さんの手元でそのまま実現したい」という目標からスタート
──本商品を開発した経緯について教えてください。単独で動く「携帯型ゲーム機」ではなく「宅内のPS5を遠隔で操作するリモートプレイ機」というコンセプトはユニークですよね。
若井宏美(以下、若井氏):
PS Portalの最初のアイデアは「高品質なコンソールでのゲーム体験を、プレイヤーの皆さんの手元でそのまま実現したい」という目標から生まれました。
発想としては“Thin Client”【※】という考え方を用いることで、DualSense ワイヤレスコントローラーの様々な機能に加えて、ゲームの映像やテキストを鮮明に輝かせるディスプレイを備えながらも、手頃な価格でこの目標を実現できると考えました。
※Thin Client:リモートプレイ技術のように「複雑な処理をローカルのハードウェアではなく、サーバー上で実行するシステム」
また、ゲームクリエイターの皆さまに追加の作業をお願いすることなく、これらの体験を実現したいと考えたことから、リモートプレイを使ったPS Portalが誕生しました。
──リモートプレイという試みは今回が初となるのでしょうか?
若井氏:
リモートプレイという体験自体は、さかのぼるとPlayStation 3の時代から提供しており、古くはPlayStation Vitaやスマートフォン、タブレット、そしてPCから、コンソールゲームの体験をストリーミングでお楽しみ頂いてきました。
PS Portalは、PS3の時代から進化し続けてきたリモートプレイの体験をさらに進化させる商品となっています。
──Dual Senceコントローラーを半分に割ったような仕様はユニークかつPS5と統一感のあるデザインですが、どのようなコンセプトでデザインされたのでしょうか?
若井氏:
「コントローラーの進化系」としてデザイン提案をしました。デザインスケッチをみたときに、「PS5ファミリー」と一目でわかりましたし、一ユーザーとして欲しくなったのを覚えています。
デュアルセンスの操作感やグリップをきちんと再現していますが、そのまま使っているのではなく、PS Portalのコントローラーとして使いやすいように制作しています。
少し特殊だからこそ、刺さると「満足度が高いポジティブなフィードバック」
──発売前と発売後で、ユーザーの反応にどのような変化がありましたか?
若井氏:
PS Portalは、「PS5をお持ちの方がTVの前から離れた場所で、自由にPS5のゲーム体験を手元で楽しむことができる」という商品です。これは、ユースケースとして刺さる方にはしっかり刺さるのですが、そういったユースケースがあてはまらない方も沢山いらっしゃる、という少し特殊な位置付けの商品です。
発表した時点では、こういったユースケースが当てはまらない方から、「自分が期待しているものではなかった」といった声も見かけましたし、ユースケースがマッチしていても、「実際のゲーム体験として、本当に期待に添うものになっているのだろうか?」といった疑問の声も拝見していました。
ですが、発売を迎えてからは、実際に使われた方の感想として、リモートプレイの体験として満足いただいている声や、「想像していたよりも快適にプレイできた」というような声を沢山頂いたので、安心すると同時に非常に嬉しい気持ちになりました。
──ユースケースにハマったユーザーからはポジティブな反応だったんですね。
若井氏:
はい。私にとって良い意味での驚きだったのは、実際に購入されている皆様が、PS Portalは「PS5に繋げてリモートプレイをする端末」であるという位置付けをきちんとご理解頂いていることでした。
ご家庭のネットワーク環境にどうしても依存してしまうため、ご自宅の環境によっては少しラグを感じる、などといったお声ももちろんゼロではありませんでした。
ですが、ネット環境に起因する体験の良し悪しについても、「なぜそうなっているのか?」「どうすればより快適に遊べるのか?」という点を、コミュニティの中でユーザーさんたち同士が会話することによって、理解を深めていただいたり、中にはPS Portalをきっかけに家庭内のネットワーク環境を一新して改善した、というような声もあり、PlayStationのプレイヤーの皆様の知見の深さに感嘆しております。
──2万9980円(税込)という価格に対しての反応はどうでしたか?
若井氏:
価格については、$199という価格は元々狙っていたところでもあり、皆様に受け入れていただける価格帯になったと思っています。日本においてはどうしても為替の影響を受けてしまう面がありますが、想定通りという声や、為替などを考慮すると妥当な価格であると理解を示してくださる方が多く、実際に発売後はたくさんの方に手に取っていただけているので、ありがたく思っています。
──実際に使用したユーザーの満足度に関してはどのような声がありましたか?発売前に予測していたものとは違いましたか?
若井氏:
前の質問の回答と少し被ってしまいますが、元々この商品において狙っていたニーズやユースケースに当てはまっていた方々から、満足度が高いポジティブなフィードバックをたくさん頂いています。携帯型のデバイスとして、「もっとこういった使い方が出来れば嬉しいなぁ」といったお声も拝見しています。
総じて、発売前に私たちが予測していた反応から大きく違うということはなく、むしろ私たちの思いに共感していただいている声が多いため大変嬉しく思っています。
PS Portalでよく遊ばれているゲームは世界と日本で違う?
──PS Portalでよく遊ばれているゲームジャンルはありますか?ある場合、なぜそのジャンルがよく遊ばれていると思いますか?リモートプレイならではのプレイ体験によって、PS5とは異なるタイトルが選ばれる傾向にあるのでしょうか。
若井氏:
11月頃のデータを見ると、これまでのスマホやPCでのリモートプレイで全般的に人気になっている『EA Sports』、『CoD モダンウォーフェア2』、『フォートナイト』などにくわえて、コンソールでよく遊ばれている『マーベルスパイダーマン 2』などがグローバルで上位に入っていました。
しかし日本においては、そこまでシビアな操作を求められないRPGゲームなどや、毎日タスクをこなすタイプのライブサービスゲームが上位に入ってきています。ここはグローバルと日本で特徴が違いますね。
PS Portalは少しだけ空いた時間にさっと起動してミッションをこなすといった遊び方にも向いているのが、こういったデータにも出てきているのかと思います。
PS Portalの今後の展開
──今後、生産数は増えていくのでしょうか?現状販売台数に対して、本商品を求めているユーザーが多いように見受けられます。
若井氏:
おかげ様で想定を上回る需要が続いておりまして、実際生産としてはとても順調で、現在も出荷は継続的に行なっています。今後さらに多くの台数をお届けしていく予定ですので、今しばらくお待ちいただければと思っております。
──PS5ではなく、PS Portalを軸にした新しいアクセサリやサービスを展開する予定はありますか?
若井氏:
Pulse Explorlarのような、まさにプレイステーションポータルのユースケースにマッチした周辺機器というのはご用意させていただいております。また、ポータブル機ではスタンドやケースといったような需要もありますので、オフィシャルライセンス商品としてPS Portalのアクセサリが出てくることを今後も期待しています。
ただ、PS PortalはPS5の体験を楽しむための商品という風に考えております。ですので、PS Portalを軸にした新しいサービスは考えておらず、あくまでPS5の世界を支える位置付けとして今後も展開していきたいです。
──ユーザーの方にコメントをお願いします。
若井氏:
やはり、実際にテレビの前でがっつり遊ぶというシーンにおいては、PS5の迫力のあるゲーム体験をみなさまにすごく楽しんでいただけていると思います。
ですが、少しダラけながらソファーに横になったり、寝る前に少し「でもあのPS5のゲームの続きがしたい」というようなケースが私自身にもあります。PS Portalという商品が出てきたことで、PS5のゲームを遊ぶ形としてさらに自由度が増し、いろんなスタイルで遊べるようになったと思っています。
リラックスしながらであるとか、ご家族がテレビを使っていて、自分がテレビを占有できないときとか、そういったシチュエーションで、ぜひPS portalを試していただきたいです。PS5のゲーム体験をいろんなスタイルで遊べるという点を楽しんでいただければなと思っています。
「高品質なコンソールでのゲーム体験を、プレイヤーの皆さんの手元でそのまま実現したい」という最初の目標を聞いたのちに、手元のPS Portalを触ってみるとその言葉がそのまま具現化したような機器に思えた。
宅内でのリモートプレイという少しピーキーにも思える仕様ながら、生活に密着したシチュエーションへの対応でゲーム機がプレイできるシーンが増える本機。ゲーマーを喜ばせるだけでなく、プレイヤーをより「ゲーマー」として定着させるような、ゲームをより生活に密接に結びつかせることのできる一台だと感じられる。
「今後さらに多くの台数をお届けしていく予定」とのことなので、リラックスしながら大作を遊びたい、自宅でテレビを占有できないなど、本機のプレイシーンに当てはまる方はぜひ改めて本機をチェックしてほしい。
からの記事と詳細 ( PS Portalプロダクトマネージャーインタビュー - 電ファミニコゲーマー )
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科学&テクノロジー
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