ASUSのポータブルゲーミングPC「ROG Ally(アールオージー・エイライ)」のエントリーモデルが正式発表され、9月21日に発売される。
ROG AllyにはAPUの異なる2モデルが用意されていて、上位版「Ryzen Z1 Extreme」が搭載された「RC71L-Z1E512」は6月14日に発売済みであったが。下位版「Ryzen Z1」を採用した「RC71L-Z1512」は「2023年夏(予定)」となっていた。
夏もそろそろ終わる9月21日に、お手頃価格のエントリーモデルが満を持して発売されるわけである。
というわけで今回は、ROG Ally発表時点で多くの方が知りたかったであろう両機種の実力差をベンチマークでチェックしてみよう。
上下モデルで異なるのはAPUのみ
メモリー、ストレージ容量はまったく同じ
さて本題であるベンチマークを実施する前に、スペックをおさらいしておこう。ROG AllyのAPUはともに最高45W、4nmのZen 4アーキテクチャだ。違いはコア数とスレッド数、動作周波数、内蔵GPUのRDNA 3アーキテクチャ「AMD Radeon Graphics」の数である。
「AMD Ryzen Z1 Extreme」
(8コア、16スレッド、3.3/5.1GHz、RDNA3演算ユニット12、キャッシュ24MB)
「AMD Ryzen Z1」
(6コア、12スレッド、3.2/4.9GHz、RDNA3演算ユニット4、キャッシュ22MB)
スペックで異なるのはAPUのみで、OSに「Windows 11 Home 64bit」、メモリーは16GB(LPDDR5-6400、オンボード)、ストレージは512GB(PCIe Gen4 x4 M.2 2230 SSD)を搭載している。
ディスプレーは7型フルHD IPS液晶で1920×1080ドット、315ppi、500cd/m²、120Hz、7ms、グレア、ペン非対応、タッチ対応、Corning Gorilla Glass Victusを採用。ウェブカメラは非搭載だが、アレイマイクは実装されている。
インターフェイスは、ROG XG Mobileインターフェイス、USB 3.2 Gen2 Type-C(データ転送、映像出力、本体への給電対応)、microSDメモリーカードスロット(UHS-II)、3.5mmコンボジャックを用意。ワイヤレス通信はWi-Fi 6E(11ax)、Bluetooth 5.1をサポートしている。
本体サイズは280×111.38×21.22~32.43mm、重量は約608g。40Whのリチウムポリマーバッテリーを内蔵しており、バッテリー駆動時間はJEITA2.0で約10.2時間、ヘビーゲームで約2時間、クラウドゲームで約6.8時間、動画再生で約6.8時間とされている。
上位モデルと下位モデルでAPU以外のスペックがまったく同じというのは珍しい。純粋に処理性能と価格を天秤に乗せて、どちらを購入すべきか選べるわけだ。
Ryzen Z1 対 Z1 Extremeの速度比較
CPUで約70%、GPUは60%の速度
それでは早速両機種でベンチマークを実施しよう。今回はRyzen Z1搭載機とRyzen Z1 Extreme搭載機で、統合ユーティリティー「Armoury Crate」で動作モードを「Turbo」に設定した状態でベンチマークを実施した。なおバッテリーベンチマークのみ、動作モードを「パフォーマンス」に設定している。
まずCPU性能だが、CINEBENCH R23のCPU(Multi Core)はRyzen Z1搭載機が10068pts、Ryzen Z1 Extreme搭載機が14323ptsとなった。
つまり、Ryzen Z1搭載機はExtremeの約70%相当のスコアとなったわけだ。スレッド数がCPU(Multi Core)の差となって表われたことになる。
3Dグラフィックス性能については、Ryzen Z1搭載機の3Dmark Time Spyは1811、Fire Strikeは4471、Wild Lifeは9892、Port Royalは709、Ryzen Z1 Extreme搭載機の3Dmark Time Spyは3147、Fire Strikeは7344、Wild Lifeは17309、Port Royalは1346、となった。
つまり、Ryzen Z1搭載機はRyzen Z1 Extreme搭載機に対して、Port Royal で約53%、Time Spyで58%、Fire Strikeで61%、Wilde Lifeで57%のスコアを記録したことになる。
内蔵GPUの性能は、Ryzen Z1のAMD Radeon Graphicsが最大2.8TFLOPS FP32、Ryzen Z1 Extremeが最大8.6TFLOPS FP32とされている。3DMarkではこの仕様値ほどの差は開かなかったわけだ。
実際のゲームに即したベンチマークとして、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK ver 1.3」(軽量品質、1920×1080ドット、フルスクリーン)を実行したところ、Ryzen Z1搭載機は3261(普通)、Ryzen Z1 Extreme搭載機は4707(やや快適)となった。
Ryzen Z1搭載機はRyzen Z1 Extreme搭載機の約69%相当のスコアを記録しており、FF XVクラスのゲームであれば、グラフィック品質を調整すればフルHD解像度でも実用的な速度でプレイ可能ということになる。
ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 8.0.4」では、両者に誤差以上の違いはなかった。システム情報でも「Micron_2400_MTFDKBK512QFM」と同じSSDが採用されているのを確認できた。将来的に異なるSSDが搭載される可能性はあるが、少なくとも現時点ではAPU以外の性能は同一ということになる。
バッテリーベンチマークは「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK ver 1.3」(軽量品質、1920×1080ドット、フルスクリーン)をディスプレー輝度40%でバッテリー残量2%までという条件でループ再生したところ、Ryzen Z1搭載機は1時間48分24秒、Ryzen Z1 Extreme搭載機は1時間28分28秒秒動作した。
Ryzen Z1 Extreme搭載機のほうがバッテリーが多少経年劣化している可能性はある。しかし、コア数/スレッド数とAMD RDNA 3演算ユニットが少ないRyzen Z1搭載機のほうが、消費電力が少ないのは間違いなさそうだ。
今回両製品を使用していてもうひとつ気になった点がある。それはディスプレーの色味の違い。システム情報ではどちらも「TL070FVXS01-1」と表示されているのだが、Ryzen Z1搭載機のほうがやや赤みが強い。カラーキャリブレーション機器で色域を計測してみても、誤差以上の違いがあった。ROG Allyの7型フルHD IPS液晶ディスプレーはある程度個体差があるようだ。
エントリー向けポータブルゲーミングPCとして
Z1モデルは非常に魅力的な存在だ
Ryzen Z1とRyzen Z1 Extremeは、主にコア数/スレッド数、AMD RDNA 3演算ユニット、キャッシュにおいて明確に差別化が図られており、その差ははっきりとベンチマークのスコアに表われた。
しかし実際に「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK ver 1.3」を実行してみると、その数値ほどの差は感じられない。もちろん並べてみれば違いはあるのだが、単体でプレイすればストレスを感じるほどではないというのが率直な感想だ。
そしてRyzen Z1 Extreme搭載機より2万円も安いRyzen Z1搭載機の8万9800円という価格は非常にインパクトがある。また、メモリーは16GB(LPDDR5-6400)、ストレージは512GB(PCIe Gen4 x4接続)と余裕があるのもポイントが高い。Ryzen Z1を搭載したROG Allyは、エントリー向けのポータブルゲーミングPCとして非常に魅力的な存在だ。
からの記事と詳細 ( ASUSのポータブルゲーミングPC「ROG Ally」のZ1モデル発売でZ1 Extemeと比較した - ASCII.jp )
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