ヘッドが取れてワイヤレス?
「ジンバル」は今や撮影用ドローンだけでなく、スマートフォン用や大型カメラ用など、様々なサイズのものがある。近年ではUSBカメラにジンバルを搭載した「Insta360 Link」などの製品も登場しており、さらに幅を広げているところだ。
中国FeiyuTechは2007年にドローン製造で創業したメーカーだが、その後はむしろカメラ用やスマホ用ジンバル専門メーカーとして知られることとなった。低価格ながら質の良い製品を多数輩出しており、ジンバルに詳しい人なら名前はよくご存じだろう。
これまではカメラ製品を出していなかったが、2020年に初めてのカメラ製品、「Feiyu Pocket」を製品化している。小型カメラにジンバルを搭載した、2018年発売のDJI Osmoとほぼ同じタイプの製品である。
その後、ブラッシュアップ版として「Feiyu Pocket 2」をリリース、続く「Feiyu Pocket 2S」では、延長ケーブルでカメラヘッドを取り外して使えるようになった。そして今回ご紹介する「Feiyu Pocket 3」では、カメラヘッドを取り外してワイヤレスで操作できるようになった。
Makuakeにてクラファンが行なわれていたが、8月から一般販売がスタート。価格は、カメラヘッド+リモコンのスターターセットが68,900円、カメラヘッドのみが49,000円、スタンダードセットにオプション品が付くコンプリートパックが79,980円となっている。
ワイヤレスでカメラが取り外せる製品としては今年6月にご紹介した「Insta360 Go3」が記憶に新しいところだが、ジンバルカメラというジャンルでは、筆者が知る限り本製品が初めてではないかと思われる。
どこにでも設置できる超小型ジンバルカメラを、さっそく試してみよう。
よく練られた仕様
Feiyu Pocket 3は、標準セットではカメラヘッドとリモコンのセットになるが、カメラヘッド単体でも、リモコン単体でも購入できる。カメラヘッドだけでも撮影できるので、先にこれだけ買っておく事もできる。
まずカメラヘッドのほうから見ていこう。重量86gとかなり軽量で、このサイズの中にカメラ、ジンバル、バッテリーが内蔵されている。底部にはマグネットが付けられており、金属部分なら特に固定ジグなどなくても取り付けることができる。
正面右側にmicroSDカードスロット、背面にUSB-C端子とマイク穴がある。上面には簡易ディスプレイがあるほか、電源ボタン、ジンバルモード切り換えボタン、録画ボタンがある。これだけで最低限の撮影はできるが、簡易ディスプレイでは何が写っているかは確認できないので、別途スマートフォンと接続してコントロールすることになる。
カメラスペックとしては、レンズが130度/F2.0の単焦点で、フォーカスはなく、おそらくパンフォーカスレンズだと思われる。センサーは1/2.3インチCMOSで、有効ピクセル数は1,200万画素。録画解像度は最高4Kで、静止画は4,000×3,000ピクセルとなっている。ISO感度は100から3200まで。撮影モードとしては、写真、ビデオ、スローモーション、タイムラプス、パノラマ、ハイパーラプスがある。
撮影モード | 解像度 | フレームレート |
4K | 3,480×2,160 | 24, 25, 30, 48, 50, 60 |
2.7K | 2,720×1,520 | 24, 25, 30, 48, 50, 60 |
HD | 1,920×1,080 | 24, 25, 30, 48, 50, 60, 120 |
内蔵バッテリーは280mAhで、動作時間はHD/30fpsの場合で約60分。充電時間は約1.5時間となっている。
ジンバルの可動範囲は、チルト- 95°~ + 50°、ロール+ 45°~ - 45°、パン- 220°~ + 40°。パン軸は、時計回りが40°しか回らないが、反時計回りなら220°まで行ける。最大回転速度は、180°/sとなっている。なお防水・防滴機能はないので、雨天や水中撮影には別途ハウジングが必要となる。
同梱品として「拡張ベース」があり、裏面に三脚穴があるほか、隙間に付属のベルクロテープを通してヘルメットやハンドルなどへ固定できる。小型三脚も付属しているほか、ジンバル保護用のケースもある。
リモコンも見ておこう。こちらはカメラヘッドのベース部よりだいぶ細い立方体で、一体としてデザインされたというよりは、オプションとして設計されたような印象を受ける。先端にUSB-C端子があり、カメラヘッドをスライドして取り付ける。底部には三脚穴がある。単体重量は73g。
USB接続している状態では、カメラヘッドとリモコン部が一体として動作する。片方の電源を入れれば、両方電源が入る仕組みだ。またリモコン部にも750mAhのバッテリーを搭載しており、接続すればカメラ側への電源供給や充電ができる。最大撮影時間は120分。
背面に小型タッチスクリーンを搭載しており、カメラ映像が確認できるほか、メニュー操作も可能だ。左にスライドすると撮影モード切り替え、上にスライドでジンバルモード切り替え、右にスライドで再生モード、下にスライドで設定モードに入る。
ジョイスティックでジンバルコントロールができる。下のレバーはデジタルズームだ。「M」ボタンはジンバルリセット、その隣が録画ボタンである。
なお一度USB端子で接続すると、ワイヤレス動作のペアリングも完了するので、あとは取り外してもワイヤレス動作できる。
そのほかオプションとして、延長ロッドとスマートフォンアダプタもお借りしたのだが、貸出機のカメラヘッド取り付け部の工作精度が悪いのか、堅くて装着できなかったので使用はしていない。
ジンバルで安定した画角
ではさっそく撮影してみよう。今回の動画は、スローモーションとタイムラプス以外は4K/60pで撮影している。
まず画角だが、「超広角」、「広角」、「広角無効」の3種類がある。写真と動画を比較してみたが、写真のほうが多少画角が広いようだ。また「広角」は超広角で歪み補正したもの、「広角無効」はそれをそのまま拡大したもののようである。このあたりは日本語のローカライズに難がある。
まずは手始めに、手ブレ補正から試してみよう。カメラヘッドに拡張ベースを取り付け、自転車のハンドルに固定した。画角やモード変更はスマートフォンの専用アプリ「Feiyu Cam」から行なう。
ジンバル動作としては「オールフォロー」「パンチルトフォロー」「パンフォロー」の3タイプがある。オールフォロー以外は水平維持が働くので、傾きの影響をうけなくなる。手ブレ補正をOFFにすることはできないようで、常時手ブレ補正状態である。
手ブレ補正はかなり強力で、いわゆるアクションカメラ系と遜色ない補正力だ。加えてジンバルが急激な動きを緩和するので、滑らかに撮影できる。
カメラヘッドの底部は磁石になっているので、車の屋根にはオプションなしでそのままくっつけられる。激しいダートコースなどを撮影する際には両面テープなどで固定した方がいいだろうが、舗装道路であれば磁力だけで問題なくくっついている。車内からスマートフォンでジンバルの角度もコントロールできるので、ドライブしながら助手席の人が風景撮影するには面白いガジェットだろう。
手持ち撮影では、歩き撮りやフィックス撮影もかなり安定している。通常撮影以外に独自のLog撮影も可能だ。動画の後半はFyLogで撮影した映像を収録したが、いかにもLogらしい発色が得られる。LUTはPocket3のサイトにはまだ掲載されていないが、Pocket2用のLUTを使い、多少色味とコントラストを修正している。
なおフォーカスはパンフォーカスなので、あまり近景すぎるとフォーカスが合わないようだ。スペックには記載がないが、テストしたところ、おそらくカメラ前30cmぐらいは離れる必要がある。このあたりはモニターを見ながら、距離を調整するしかない。
多彩な撮影モードをテスト
本機はジンバルを搭載したことで、一般のアクションカメラにはない機能を備えている。その一例が、パノラマ撮影だ。ドローンにも同様の機能があるが、ジンバルを自動制御して多角的に写真を撮影し、それをステッチングして広い画角を得るという機能だ。
動作モードとしては2×2、横に4、180°の3つがある。スマートフォンアプリから制御すると、AI補正モードが使える。FyLogで撮影し、LUTを当てたような画像が気軽に手に入る。
タイムラプス撮影は、小型カメラでは人気のある機能だ。本機も対応しているが、DJIのジンバル製品では、ジンバルを少しずつ動かしながら撮影するモードを備えている。だが本機にはそのような機能はなく、単に固定カメラとして撮影できるだけである。せっかくのジンバル機能が活かせないのは、もったいない気がする。
Vlogにも使えるだろうということで、音声収録のテストもしてみた。音声収録レベルの設定がわかりにくいが、スマホアプリの設定のところに「集音量設定」という項目がある。ここから消音、小、中、大が選択できる。人のしゃべりを集音するには、「大」に設定する必要がある。
マイクはモノラル、無指向性のようだ。マイクの反対側に回ってみると、多少音がオフになる傾向はあるものの、それほど変わりなく集音できる。ただ風切り音低減のような機能はないので、屋外での集音にはあまり向かないだろう。
スローモーションは、HD/120pでの撮影となる。30p再生で4倍スローということになる。解像感はそれほど高いわけではないが、SNも良く、手持ち撮影でも安定したフィックスが撮影できる。このあたりはやはりジンバルならではの特徴だろう。
総論
グリップの先にジンバルカメラが付いた製品なら、DJIのPocketシリーズがすでに先行しており、だいたいの使い勝手はすでにお分かりだろう。一方Feiyu Pocket 3の特徴は、カメラヘッド単体でも動かせて、なおかつワイヤレスでリモコン操作ができるというところである。
カメラヘッドだけではバッテリー容量が多少心もとないところもあるのだが、ワンポイントでパッと撮影するようなスタイルでは非常に機動性が高い。スマホレスで撮影できるところも今風ではあるのだが、細かい設定変更などはやはりスマホアプリのほうが一覧性が高い。カメラヘッドとスマホだけでも相当遊べるだろう。
からの記事と詳細 ( ありそうでなかった“ヘッドが取れる”超小型ジンバルカメラ「Feiyu Pocket 3」【小寺信良の週刊 Electric Zooma!】 - AV Watch )
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