東京大学や名古屋大学などの共同研究チームは、「宇宙再電離」と呼ばれる初期宇宙空間の電離状態の変化について、場所によってその進行具合が異なることの原因が、紫外線輻射場のゆらぎであることを明らかにした。
研究チームは、すでに観測されているクェーサー(準恒星状天体)スペクトルを用いて約128億年前の時代の宇宙の透明度(紫外線が中性水素ガスによって吸収される度合い)を調べ、再電離の進行が極端に遅い領域と早い領域の計3領域を同定。これらの領域についてすばる望遠鏡で撮像観測を実施し、得られた画像から透明度を測定した時代と同じ時代に存在する「ライマンアルファ輝線銀河」と呼ばれる種族の銀河を検出し、その分布を調べた。
その結果、再電離の進行が早い領域ではライマンアルファ輝線銀河が多く、進行の遅い領域では同銀河が少ないことが明らかになった。この結果は再電離の進行が早い領域ほど銀河密度が大きいという紫外線輻射場のゆらぎを原因とするモデルの予測と一致する。さらに、今回の研究ならびに先行研究で得られた銀河密度と宇宙の透明度の関係は、ガス温度のゆらぎを原因とするモデルよりも、紫外線輻射場のゆらぎを非一様性の原因とするモデルの予測に近いことが分かった。
ビッグバンから数億後の130億年程度昔の宇宙では、それまで中性だった宇宙空間のガス(水素原子やヘリウム原子)が初代天体によって電離される「宇宙再電離」と呼ばれる宇宙空間の大きな変化があったとされているが、詳細な過程や原因は解明されていなかった。今回の研究成果は、王立天文学会月報(Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)のオンライン版に8月25日付けで掲載された。
(中條)
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