11月は勤務先で年末調整に取り組む人が多いのではないでしょうか。年末調整は、会社員や公務員など、勤務先から給料を受け取っている場合に必要な手続きです。フリーランスや複数の勤務先から給与を得ている人、収入が一定額以上ある人は年末の年末調整ではなく、翌年の確定申告が必要です。
■年末調整、なぜ必要なの?
会社員や公務員の給料はおおよそ毎月固定で支払われます。支払われる給料の額に応じて、所得税を天引きするのが日本の給与税制の流れです。
具体的な所得税額は、毎年発行される源泉徴収税額表(国税庁)に記載があります。
給与支給額から社会保険料控除を引いた額が20万円の場合は、単身者で扶養親族がいなければ4,840円の所得税が天引きされます。このような手続きを毎月の給料と賞与で行い、所得税を会社や行政側が天引きして国に納める制度が源泉徴収制度です。
所得税は、1月から12月までの収入を足し合わせて、各種控除額を差し引いた「所得」に対して税率をかけて納税額を計算します。手当や残業代、昇給、社会保険料の変更などで、年間の所得は12月の給料の支給額が決定するまで、確定できません。
毎月、暫定的に天引きしていた所得税を、年末に精算することが年末調整の目的です。
■年末調整でできること、できないこと
年末調整を行うと、各種所得控除を集計するため、人によっては天引きされすぎた所得税の還付を受けられます。
所得税を計算する際に利用できる所得控除は14あります。そのうち年末調整では11の控除を使うことができます。
・基礎控除
自分に関する所得控除です。自分の経費化と考えるとわかりやすいかもしれません。
・配偶者控除
年収103万円未満の配偶者に関する所得控除です。専業主婦の経費化と考えます。
・配偶者特別控除
年収103万円超、約200万円未満の配偶者に関する所得控除です。こちらも配偶者控除と同様に専業主婦の経費化と考えます。配偶者の収入によって、配偶者控除の適用か、配偶者特別控除の適用か、適用できないかが変わります。
・扶養控除
16歳以上の家族分の経費化と考えます。扶養親族の年齢によって、控除額が変化します。
・生命保険料控除
死亡保障の生命保険、入院や手術や介護費用向けの介護医療保険(がん保険含む)、老後に向けた個人年金の支払いを経費化する優遇制度です。自助努力を促す仕組みと言えます。
・地震保険料控除
自宅の建物や家財に対する地震保険の保険料を経費化する優遇制度です。自助努力を促す仕組みです。
・小規模企業等掛金控除
経営者やフリーランスのための小規模企業共済の掛け金やiDeCoの掛け金を経費化してくれます。iDeCo節税の鍵は所得控除の利用です。
・社会保険料控除
健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、国民健康保険料、国民年金保険料、雇用保険料など社会保険とよばれる制度に加入するために給与天引きされた保険料を経費化するためのものです。
・障害者控除
納税者本人や家族に障害がある場合に、経費化の枠を拡大する仕組みです。
・ひとり親控除、寡婦控除
シングルマザー、シングルファーザー、寡婦(配偶者が亡くなった女性)に対する、経費枠を拡大するものです。
・勤労学生控除
学生の立場で働く場合の経費枠です。あまり活用されないかもしれません。
そして、住宅ローン控除という名称の税額控除も住宅購入2年目から年末調整で税額調整が行われます。
・住宅ローン控除
住宅借入金等特別控除という名称で、初年度は確定申告で控除を適用します。2年目以降は年末調整で控除を適用することができます。
■この収入がある人は年末調整だけではダメ
年末調整が対象外となる場合があります。どのような人が該当するのでしょうか。
・年収が2000万円を超える人
一部の職種や経営者の場合、年収が2000万円を超えると年末調整の対象外となります。そのため、翌年に確定申告を行う必要がありますので注意しましょう。
・会社員か公務員で、給料と退職金以外の所得が20万円を超える人
例えば、不動産収入がある人、副業収入が多い人などが該当しそうです。ビットコインなどの暗号資産で儲かった人、暗号資産の売買で換金していないけれど、他の暗号通貨になっている人は注意が必要です。
・2ヶ所以上から給料をもらっている人
複数の会社を経営している人や、複数の会社に勤めている人が対象です。
■ふるさと納税と医療費控除は確定申告が必要
ふるさと納税に代表される寄付金控除は年末調整の対象外です。視点を変えて考えてみると、仕事と関係ない事柄の控除は確定申告で対応します。
医療費控除も年末調整の対象外です。妊娠・出産のタイミング、怪我や病気で入院した場合、高額の歯科診療を行った場合などは医療費控除の対象となりやすいです。医療費控除は治療費以外にも交通費なども対象になりますので、経費の履歴を残しておきましょう。
■年末調整、やらないとどうなる?
年末調整をやらないとどうなるのでしょうか?次の3つがしっぺ返しになります。
1.所得税が戻ってこない
多くの人は、年末調整を行うと払いすぎた所得税が還付されます。還付分を臨時ボーナスや臨時のお小遣いとして楽しみにしている人も多いでしょう。しかし、年末調整を行わなければ、前述の確定申告を行う以外に税還付の余地はありません。つまり、年末調整をしっかり行わないと、所得税の過払いが発生することになるのです。
例えば、単身者で社会保険料控除後の金額が毎月20万円の場合を考えてみます。毎月4,770円の所得税が源泉徴収され、年間57,240円天引きされます。年末調整において、給与所得控除80万円、小規模企業共済等掛金控除が24万円、一般生命保険料控除4万円、介護医療保険料控除4万円、個人年金保険料控除4万円、基礎控除48万円が差し引かれ、課税所得は76万円となります。※社会保険料控除は既に適用したと仮定して計算しています。
課税所得76万円の場合、所得税額は3.8万円、復興特別所得税798円ですから、源泉徴収された57,240円との差額である、18,442円が年末調整しなければ戻ってきません。
2.確定申告という年末調整よりも大変な作業が待っている
年末調整が面倒と思ったあなたは、確定申告というもっと面倒な仕組みで申告するか、年末調整を頑張るかの二択。あるいは税理士にお金を払って依頼するという3つの選択肢があります。転職者などで自分での確定申告は無理だと感じたら、税理士に依頼するのも一案です。所得税の申告時期には、多くの高齢者やフリーランスと考えられる人たちが長い行列を作って書類の提出に来ています。年末調整が難しい人には、確定申告はより難易度が上がります。社内の人に頭を下げてでも、書き方を教わったほうがいいでしょう。
3.勤務先の評価が下がる
勤務先で年末調整をする場合、締切が設けられるはずです。いつまでたっても年末調整を行わなければ、社内から督促が来て上司や同僚に知られることになるでしょう。人事部門が年末調整の対応者であれば、人事評価が下がってもおかしくありません。生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等控除など、全ての控除を使わなくてもいいので、書類だけは出しておくことをオススメいたします。
いかがでしょうか。年末調整の意味と仕組みについてお伝えしました。お金の知識を学ぶのに、税金ほどわかりやすい仕組みはありません。ルールに沿って計算するだけ、ルールに則って節税するだけなのです。お金に興味を持つのは納税からという人も多くいるでしょう。みなさんは、所得控除をフル活用して楽しくお金を管理してください。
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】
からの記事と詳細 ( めんどうな年末調整やらないとどうなる? 翌年に”しっぺ返し“が来るケース(高橋成壽) - 個人 - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース )
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