不動産を購入する際には、物件の購入代金のほか、所有権を自分の名義とするための登記費用や住宅ローンを利用する金融機関に支払う融資手数料、仲介した不動産会社への報酬となる仲介手数料など、いろいろな諸費用が必要です。
そうした物件購入時の諸費用の1つに「印紙税」があります。ここではこの印紙税について解説します。
印紙税とは?
印紙税は、印紙税法によって定められた課税文書に対して課税される税金です。印紙税法で掲げられている課税文書は20種類あり、なじみのあるものとしては一定額以上の代金を支払ったときの領収書や生命保険などの保険証券も課税文書となっています。
不動産の取引に関係するものでは、購入時に取り交わす不動産売買契約書や住宅ローンを借りる際に金融機関と取り交わす金銭消費貸借契約書、注文住宅などを建てる際に建築会社と取り交わす建築工事請負契約書といったものが課税文書となります。
したがって、住宅ローンを利用して注文住宅以外の不動産を購入する際には、不動産の売買契約書と銀行などとの金銭消費貸借契約書を取り交わす際に、印紙税を支払うことになります。
印紙税の税率は?
印紙税の税率は課税文書の種類と文書に記載された金額によって異なります。
ここでは不動産の購入時に取り交わす不動産売買契約書と住宅ローン利用時の金銭消費貸借契約書に必要な印紙税について、一般的な範囲を抜粋して紹介します。
〈印紙税本則(抜粋)〉
契約書などに記載された金額 (売買代金、融資金額など) |
印紙税額(印紙代) |
---|---|
100万円を超え500万円以下のもの | 2,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 1万円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 2万円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 6万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 10万円 |
出典:国税庁 No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm)
不動産の売買契約と建築工事請負契約については、2020(令和2)年3月31日までに取り交わされる契約書の場合、上記の本則以外に印紙税の軽減措置が設けられており、以下のようになっています。
〈印紙税の軽減措置(抜粋)〉
契約書などに記載された金額 (売買代金、融資金額など) |
印紙税額(印紙代) |
---|---|
100万円を超え500万円以下のもの | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 3万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 6万円 |
出典:国税庁 不動産売買契約書の印紙税の軽減措置
(https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/08/10.htm)
たとえば、5,000万円の物件の売買契約を締結した場合、本来なら本則の2万円の収入印紙が必要ですが、2020年(令和2年)3月31日までに契約した場合は1万円の収入印紙(印紙税)でよいということになり、半額に軽減されます。
※2020(令和2)年2月28日現在の情報です。
印紙税の納め方
印紙税は、収入印紙を購入し、該当する課税文書(契約書など)に貼付して消印することによって納めたことになります。
ポイントは収入印紙を契約書などに貼っただけではまだ納めたことにならず、消印すること(収入印紙をほかでは使えなくすること)が必要な点です。
なお、不動産売買契約や住宅ローンなどの金銭消費貸借契約では、消印は契約書に使用した印鑑で割印することが一般的ですが、消えないボールペンなどで収入印紙の紙面と契約書などにまたがるように署名するなどして消印することもできます。
収入印紙の入手方法
収入印紙は、郵便局や法務局のほか、コンビニエンスストア、たばこ屋、酒店などでも購入することができます。しかし、コンビニエンスストアなどでは1,000円を超える印紙を販売していないことが多いようです。
そのため、不動産の売買契約のように納める印紙税(貼付する印紙の額面)が高額なものは、郵便局や法務局で購入する必要があります。不動産の売買契約などでは売主や仲介の不動産会社が収入印紙を用意してくれるケースもあるようです。
印紙を貼らなかったらどうなる?
貼付すべき書面に必要な額の収入印紙を貼らなかった場合や、消印しなかった場合はどうなるのでしょうか?
その場合、契約書そのものは有効となりますが、印紙税未納となり過怠税が課せられ、最も重い罰則では懲役という刑罰が科されることがあります。具体的に罰則を見ていきましょう。
必要な額の収入印紙を貼っていない場合 |
納付すべき印紙税額の3倍(印紙代+2倍の過怠税) |
収入印紙を消印しなかった場合 | 納付すべき印紙税額の2倍(印紙代+同額の過怠税) |
収入印紙を貼るのを忘れ、そのことを自己申告した場合 | 印紙代+1.1倍の過怠税 |
故意に印紙税の納付を免れた場合など | 3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはその併料 |
以上のように、思った以上に厳しい罰則も設けられていますので、しっかりと額面を確認して貼付し、消印まで忘れないようにしましょう。
印紙を間違って貼ってしまったら?
間違った収入印紙を貼ってしまった場合、特に不要に高い収入印紙を貼ってしまった場合などは、印紙税の還付(過大な分の返金)を受けることができます。
ただし、還付の対象となるものは以下に限られています。
- 契約書や領収書などの課税文書に誤って不要に高額な収入印紙を貼ってしまった場合
- 印紙税の課税文書に収入印紙を貼付したものの、その契約書などを使用する見込みがなくなった場合
- 印紙税(収入印紙の貼付)が不要な文書に収入印紙を貼ってしまった場合
以上の3つのケースに該当する場合は印紙税の還付を受けることができます。
具体的には、印紙税の還付を受ける場合は「印紙税過誤納確認申請書」に必要事項を記載し、対象の文書とともに納税地の税務署長宛てに申請します。還付は銀行や郵便局を通じて送金されますので、還付金を受け取るまでには相応の日数がかかります。
なお、対象の文書を作成した日から5年を経過すると還付を受けられなくなります。間違ってしまった場合は早めに申請したほうがよいでしょう。
まとめ
対象となる契約書の記載金額によっては、印紙税が高額になることもあります。
特に不動産を購入する場合には、物件の売買金額だけでなく住宅ローンの借入額も高額になるため、契約時に必要な印紙代も高額です。
収入印紙の貼り忘れなどの不備があれば、より高額な過怠税まで支払わなければならなくなってしまうので、あらかじめ金額を調べたうえで準備するようにしましょう。
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February 28, 2020 at 01:31PM
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