かなり前の話だが、筆者が最初に来日した頃、自分の車に米国のナンバープレートを付けたり、ステッカーを貼ったりする人たちが多かった。米国に憧れがある人が多かったんだなあという印象を受けた。
最近、シリコンバレーではその逆の現象が起きている。特に近所の車を見ると、日本や日本の車文化に憧れをもつ米国人が増えたという気がした。わが家の近くに黄色の広島のナンバープレートを付けた2000年代の三菱ランサーが頻繁に駐車している。日本の初心者のステッカーを貼った車も見かける。日本でよく見たアクセサリーをつけた見事な1980年代のトヨタ・クレシーダも見た。
特に多く見かけるのは日本の「走り屋」と「暴走族」の間のようないでたちをした車だ。こうした車はだいたい90年代もしくは2000年代のもので車高を低くしたり、マフラーと排ガスシステムを改造したりする。特殊なスポイラーなどを付けた改造車も多い。
さらに目立つのはアクセサリーだ。ほとんどの改造車は日本語で書かれている、もしくはアニメのキャラクターのステッカーを貼っている。たまに中国語で書いているスティッカーも見たことがある。米国人の多くはナンバープレートを保護するナンバープレートフレームをつけるが、日本語で書かれているナンバープレートフレームもある。
日本語が通じるものや通じない変な言葉が書かれた車もある。もちろん派手なペンキで塗りたくった車もあって、日本語で書かれていたりする。
車の種類として、ホンダのシビックやアキュラブランドで米国で販売していたホンダのインテグラ、日産のフェアレディZ、スバルのWRX、トヨタのスープラ、マツダのRX-7といった車が代表的だ。たまに、魅力的には見えないがスピードが出ないトヨタのヤリスみたいな車も改造する人がいる。
人口の約60%以上がアジア系米国人としている街に住んでいるからかもしれないが、こうした車のオーナーは若い世代のアジア系米国人が多い気がする。こうした改造された多くの日本車が駐車場に集結したのを見たことがあるので、なかには愛好クラブのメンバーとして活動をしている人々だろうと思う。
日本車の改造車が増えてきたのと日本のアニメ人気が広がる時期が重なっていることから、やはりこうした車の普及と日本のアニメ文化の広がりが関係しているのだと思う。もちろん、06年に登場した東京が舞台の「The Fast and The Furious」という人気映画シリーズの第3版も影響したのかもしれない。
もっともこの新しい日本車文化から日本の自動車メーカーが新しいビジネスチャンスを得られるとは思っていない。
それより、日本のメディア業界にとって、海外でも人気が得られるコンテンツ作りのいいヒントになるのではないかと思ったりする。日米共同で新しい車文化のテレビ番組を作れれば面白いかもしれない。
[日経産業新聞2023年8月1日付]
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科学&テクノロジー
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