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Wednesday, March 30, 2022

トヨタ自動車が、Microsoft Azure を基盤とする知財 DX プラットフォーム「Proof Chain of Evidence」をスタートアップ企業の Scalar と構築 - News Center Japan - Microsoft News

グローバルにビジネスを展開するトヨタ自動車株式会社が、技術情報に関する証拠力を高め、知財係争訴訟への対応力を強化することを目的に、分散型台帳技術を提供するスタートアップ企業株式会社 Scalar (本社: 東京都新宿区、代表取締役 CEO 兼 COO: 深津航、代表取締役 CEO 兼 CTO: 山田浩之) と、グローバルな証拠採用ルールに基づいた電子データの証拠を保全する知財デジタルトランスフォーメーション (DX) プラットフォーム ”Proof Chain of Evidence (PCE)” を Microsoft Azure 上に構築、運用を開始しました。

今回開発された PCE は、Scalar が提供する分散型台帳ソフトウェア「Scalar DL」の改ざん検知機能を利用して、電子データの証拠保全を行うシステムです。

PCE は、記録した電子データに対して、以下の証明を行います。

  • 電子データがいつ存在していたのか (WHEN)
  • 電子データがどの順序で存在していたのか (SEQUENCE)
  • 電子データが存在していた時点から、これまで改ざんされていないのか (WHAT)
  • 上記について、10 年を越えて証明する (LONG-TERM)

さらに PCE は、上記の情報をグローバル (日本、中国、欧州、米国) で、裁判の証拠として提出できる形で保全します。

PCE を開発した背景には、紙から電子データへの移行がパンデミックで加速する一方で、複製や改ざんが比較的容易であり、証拠を保全することが難しいという、電子データの性質があります。電子データは、社内システムに格納すると、改ざんされていないことを第三者に証明することが難しく、証拠として保全するためには、電子公証の利用や、利益相反する相手と共有するなどの手段を講じる必要がありました。しかし、このような手段には手間がかかり、将来利用するかもしれない証拠を確実に保全するには向いていません。

組織が進める DX においては、紙の書面を単にデジタル化するたけではなく、電子データが証拠として利用できるように保全しておく必要があります。特に、知財係争訴訟で証拠として使用する電子データは、特許の有効期限である 20 年を越える証拠保全が必要になります。このため、電子署名の有効期限の 1〜3 年、タイムスタンプの有効期限の 10 年を越えるため、証拠の保全はさらに難しくなります。

※電子公証: 電子データの作成者やそのデータがある次点で存在したことを証明する仕組み

電子データの証拠を保全する

従来の方法では、電子データの証拠を保全するには、紙の書面を公正証書役場に持ち込み、公証を取得するか、電子公証によってタイムスタンプを付与するという方法が採られてきました。しかし、日本国外においては、それぞれの証拠提出ルールがあるため、追加で大使館認証を取得するなどの手続きが必要です。

また、個々のファイルにタイムスタンプを付与する場合、大量の書面すべてにタイムスタンプを付与することの難しさや、10 年の有効期限を迎える前に、新たにタイムスタンプを付与し直すなどの対応が必要でした。

今回開発した PCE では、クラウド上のデータ保管サービスに保管された電子データの証拠を、分散型台帳技術である Scalar DL に記録し、記録した順序と記録された内容の改ざん検知を行います。また、一連の証拠の連なりを証明する「証拠のチェーン」を形成します。この「証拠のチェーン」は、電子データ保管サービスに保管された電子データと、Scalar DL 内に記録された電子データの証拠 (電子データのハッシュ値) で形成され、Scalar DL 内に記録された電子データの証拠は、電子データの登録・改訂の順序を維持した状態で保全されます。さらに、この Scalar DL 自体が改ざんされていないことを証明するために、Scalar DL の証拠 (一連の電子データの証拠を記録したレコードの連なりの終端のハッシュ値) に対して、各国の裁判所が認めるトラストサービスを用いて、定期的にタイムスタンプを付与します。タイムスタンプが付与されると、タイムスタンプの証拠であるタイムスタンプ・トークンが生成され、これを Scalar DL に記録します。

この仕組みにより、大量の電子データに対する自動的な証拠保全と、タイムスタンプ・トークン自体を保全することで、タイムスタンプの有効期限である 10 年を越える電子データの保全を可能にしました。

※この仕組みは、トヨタ自動車と Scalar で共同発明を複数出願中

PCE は、Microsoft Azure 上に構築され、今回導入されたトヨタ社内の既存のデータ保管システムをそのまま利用しつつ、PCE と統合して運用することが可能です。また、Azure AD, Azure ADB2C, Cosmos DB などの Microsoft Azure が提供する様々なマネージドサービスを利用することで、認証基盤との連携や、データの確実なバックアップ、リカバリを可能にし、保守・運用を一元管理できるようになりました。

トヨタ自動車は、PCE の最初のユースケースとして、発明に対する先使用権の証明のための電子データの保全から取り組み始めています。次の段階として、競争が求められる技術領域において、外部企業と共同研究開発を行う際に問題となるノウハウを含む知財のコンタミネーション (複数の企業の知財が混ざってしまい、どちらの知財なのかがわからなくなる状態) を回避するために利用する予定です。

また、今後 3 社は、トヨタ自動車のグループ企業や取引先企業にもこれを展開し、企業が持つ電子データの証拠を保全することで、知財だけでなく、電子データに証拠性が求められる様々なシーンに展開していくことを目指します。

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