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Sunday, June 6, 2021

歩みが遅いデジタル化 全口座ひも付けで必要な人に必要な給付を | | 矢田稚子 - 毎日新聞

日本は「デジタル後進国」

 菅義偉首相がデジタル社会を目指すと表明したことを歓迎したい。デジタル化は情報の連携を容易にして行政サービスを拡充させることができ、社会を大きく変えるツールとなりうるからだ。

 しかし、この表明は遅いと言わざるをえない。コロナ禍で多くの人が日本のデジタル化の「後進ぶり」に驚いたことだろう。

 国民1人あたり10万円が給付された特別定額給付金の際、マイナンバーカードを通じた申請がシステムエラーになり、かえって受給が遅くなったことや、インストールを呼びかけていた新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」が不具合で機能していなかったことなど、あきれるしかない。

 また、一時、マスクの購入が困難な状況で多くの国民が困ったが、その一方で、台湾のようにマスクの生産、流通を管理し、国民に行き届くような政策をデジタルを活用して実行している国・地域もあった。

 高速通信網の整備をうたったIT基本法が施行されてから約20年が経過している。政府は何をしていたんだと思った人は多いだろう。

 デジタル化が進めば、行政サービスが迅速・簡便化するだけでなく、コロナ禍のような危機にも大きな力を発揮する。

 生活を支援する給付金を迅速に受け取れるようになるのはもちろん、感染者のデータベース化――性別、年齢、症状、治療方法、治癒または重症化までの期間など――をすれば、今後の治療対策や治療薬の開発などに大きく役立てることができるはずだ。

 重要なのは「デジタル化で何ができるか」だ。マイナンバーカードの普及率が上がらないのは、カードによるメリットが感じられないからだ。デジタル化のメリットを分かりやすく示しつつ、「ギアチェンジ」をしてデジタル化を進めてほしい。

「命の口座」の義務化を

 だが、5月12日に成立したデジタル改革関連法では十分でないところも多い。最も取り組みが不足していると感じるのは、金融機関の口座とマイナンバーとのひも付けだ。

 今回の法案による制度では、国民が任意でマイナンバーに1人1口座を登録することになる。口座があれば、経済対策や災害時の給付金などの迅速な受け取りにつながり、大きな前進といっていいだろう。任意なうえ1口座でいいので、登録用に新規に作る口座でもよい。国民にとって非常にハードルが低い内容となったといえる。

 しかし、任意のままでいいのか。…

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