1. ドケルバン病はどのような病気なのか?
ドケルバン病は腱鞘炎の一種です。「腱鞘炎」という言葉を耳にしたことがある人は多いかと思いますが、ここで少し掘り下げて説明します。
指の骨には「腱(けん)」というひも状の構造物が付着しています(上の図を参照)。腱は筋肉と骨をつないでおり、筋肉の動きを骨に伝えることで、関節を曲げたり伸ばしたりすることができます。
頻繁な曲げ伸ばしで腱を酷使すると、腱と腱鞘(腱を包み込む膜)とが擦れて、炎症が起こり、痛みや腫れが生じます。この状態が腱鞘炎です。そして、親指に起こる腱鞘炎として知られているのが、ドケルバン病です。スマートフォンの片手操作による親指の使いすぎが原因の一つとして考えられていて、「スマートフォン・サム」と呼ばれることもあるほどです(サム(thumb)は親指のこと)。
前述したとおり、ドケルバン病の主な症状は親指を動かした際に生じる痛みです。悪化すると、痛みのために親指が使えなくなり、日常生活に支障をきたすことがあります。また、親指の付け根付近には炎症を起こした腱があり、押すと痛みます。
2. ドケルバン病になりやすい人
スマートフォン・サムと言う異名を持つ病気ではありますが、スマートフォンに限った病気というわけではありません。同じように親指をよく使う「パソコン操作」、「楽器演奏(ギターやピアノなど)」、「野球やテニスなどのスポーツ」もドケルバン病の原因として考えられていて、スマートフォンが普及する前から痛みに悩まされる人がいました。また、男性より女性(特に更年期や出産直後)に多く見られることや、糖尿病の人がなりやすいことも知られています。
3. ドケルバン病の治療:悪化すると手術が必要になる
親指を動かそうとすると少し痛む、という程度の場合、消炎鎮痛剤(飲み薬または湿布薬)と親指の安静で回復が期待できます。一方で、「薬を使っても効果がない」、「症状を繰り返す」といった場合、関節へのステロイド注射や手術が必要です。手術では腱鞘を切開して、炎症を起こして腫れている腱を開放します。
治療法があるといえ、症状がひどくなるのは避けたいものです。ドケルバン病ではいきなり重症化することは少なく、軽症から徐々に悪化していくのが一般的です。つまり、軽症のうちに適切に治療するのが肝要なのです。親指に痛みを感じたらすぐに、親指の安静と消炎鎮痛剤の使用で症状がよくなるかどうかを試してみてください。それでも症状が改善しない場合には早めに整形外科で相談してみてください。
4. ドケルバン病の予防
スマートフォンによるドケルバン病を避けるには、親指の酷使を避けることが効果的です。具体的には、片手持ちでの親指操作を減らす、つまり、使用時間そのものを減らすか、減らせなくてもスマートフォンを持つ手と反対の手で操作する(写真参照)と良いです。また、パソコン操作や楽器演奏、運動が主な原因と考えられる人では、例えば1時間につき10分間は休憩をとる、といったことを習慣づけるようにしてください。なお、休憩を挟む間隔はあくまで目安なので、自分にとって最もよい間隔を探してみるとよいです。
「重症化させないこと、予防に努めること」がドケルバン病では何より重要です。親指が悲鳴を上げる前に十分なケアをしてみてください。
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。
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September 29, 2020 at 08:09AM
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スマートフォン・サム(親指)の異名を持つ病気 - MEDLEY(メドレー)
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