緊急事態宣言発令中に急浮上した「9月入学」論は、具体案が分かるにつれて慎重な意見が強まってトーンダウンし、来年の導入は見送られそうだ。もう混乱を広げるだけの不毛な議論はやめて、今、必要な教育の質の向上を急ぐべきだ。
私が会長を務める日本教育学会は、来年9月に一斉実施した場合、国や家庭の負担額は6兆9000億円超に達すると試算している。そんな巨額予算を割くぐらいなら、先にやるべきことがある。
学校再開後も学年や学級ごとの分散登校が続く。学校への支援が必要なのはこれからだ。少人数で学級を分ければ、人手がかかる。学会は教育予算を年1兆円積み増し、小中高校で教員10万人、学習指導員ら13万人を増員するよう提言している。詳細は学会のサイトに掲載した。文部科学省は小中学校の教員を3100人増員するというが、少なすぎる。思い切って増員してほしい。
この問題は高校生らのウェブ上での署名活動で火が付き、東京や大阪などの知事の発言で拡大、安倍晋三首相が「前広に検討したい」と表明するに至った。高校生の不安はよく分かる。だが、休校中の学習の遅れによる格差は9月入学では埋まらない。卒業が遅れると困る人々も大勢いる。「早く卒業して家計を助けたい」という高校生の声はなかなか届かない。
欧米で主流の9月にすれば海外留学が活発になり、国際化が進むという便乗論も疑問だ。留学生が少ないのは、言葉や文化の問題や企業の雇用慣行など入学時期以外の要素が大きい。
検討過程で浮かんだ課題を考えよう。文科省は(1)来年9月の一斉実施(2)5年かける段階実施-の2案を示した。共に待機児童が発生し、現行制度なら1学年下の子供の一部が同学年になる。教員や教室の確保が必要で、受験や就職の競争も激しくなる。特に一斉実施案だと、来年は17カ月分の子供が小学校に入学し、この学年の人数は通常の1.4倍となって負担が著しく大きい。
現行と同じ形で4月に入学し、8月までを0年生とする案も出たが、教育内容は示されず、学童保育の受け皿も足りない。
どの案も卒業を先延ばししたつけを未就学児に押し付けるだけだ。それより、学習の遅れを取り戻すために教職員を大幅に増やすべきだ。
感染者が多い首都圏や関西圏に目が行きがちだが、地方も休校が長期化し、手当てが必要なのは同じ。一度勉強が遅れ、格差が広がると、家庭だけではなかなか埋められず、影響は長く続く。学校で個別指導する仕組みを作る必要がある。
教員は第2波に備えつつ、対面とオンラインの授業を併用する難しい対応を迫られる。同時にカリキュラムも組み直さなければならない。一方、ストレスを抱えた子供の心のケアも必要だ。
教員を支えるため、ボランティアも含めて大勢の大人が学校に入り、印刷や消毒などの雑務を補助しつつ、子供を見守る態勢があるといい。
受験生には特別の配慮が要る。入試時期を年度内で遅らせたり、試験範囲から未履修分野を除いたりする検討が必要だ。
世間を混乱させる議論はやめ、学校を夢や希望をつくり出す場に転換できるよう萩生田光一文科相に求めたい。(談)
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【プロフィル】広田照幸
ひろた・てるゆき 日本大教授。1959年広島県生まれ。教育学専攻。東大大学院博士課程修了、東大教授などを経て現職。「教育改革のやめ方」など著書多数。
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