V型エンジンときけば高級車のイメージがあって、排気量も2.5Lとか3Lくらいをイメージする。しかし歴史は奇怪なり。なんと三菱はわずか1.6LのV6を作っていたのだ!
文/ベストカーWeb編集部、写真/三菱自動車
■コンパクトカーもゴージャスだった90年代
カレンダーを30年くらい巻き戻した1990年代は、バブルの名残なのか日本にも高級ブームが渦巻いていた。クルマにも「4気筒より6気筒」みたいな価値観があって、2LのFR車は直6エンジンが当たり前だった。
その流れはコンパクトカーにも波及する。とはいえコンパクトカーはエンジンを横に置く前輪駆動だから直6は長すぎて積めない(ボルボは積んだが)。なんとか高級な6気筒を積めないか。悩んだ末に生み出されたのが、全長の短い小排気量V6エンジンである。
最初はマツダだった。1991年6月、1.8LのV6エンジンを積んだコンパクトクーペ「ユーノス・プレッソ」が誕生する。
ところがプレッソの天下は続かなかった。わずか4カ月後の91年10月、当時イケイケだった三菱が4代目ミラージュとランサーになんと1.6LというV6エンジンを搭載し、発表したのだ。V型6気筒エンジンとしてはもちろん世界最小である。
V6エンジンを積んだミラージュ/ランサーは、6気筒をアピールすべくそれぞれ「ミラージュ6」「ランサー6」と呼ばれた。
■スムーズな吹け上がりは爽快だったが……
V6エンジンの型式は6A10型といい、ボア73.0mm×ストローク63.6mmというショートストローク型。気筒あたり4つのバルブを持つDOHC24バルブで、最大出力は140psで最大トルクは147Nmを発揮した。
このエンジン、当時のベストカー本誌を読んでみると、高回転までスムーズに回る吹け上がり感は爽快だったが、低速トルクが弱かったようだ。1.6のL6気筒ということは1気筒あたり容積=約267cc。こいつをショートストローク型にすると確かにトルク感は薄くなっただろう。
ミラージュ6とランサー6は、コンパクトカークラスに上質さを持ち込んだものの、その市場では別のブームも起きつつあった。1991年、5代目ホンダ シビックがVTECエンジンで170psを達成し、1.6Lクラスもがパワーウォーズが勃発したのだ。
このパワーウォーズには三菱自身もミラージュ・サイボーグ(175ps)で応戦したのだが、こうなると上質・高級なV6コンパクトの存在感はすっかり消えてしまった。
実はセダンボディのランサーについては、1995年に登場した5代目に1.8LSOHCのV6エンジンが継承されている。ところがミラージュ6については5代目に後継グレードを残すことなく、その使命を終えたのである。
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