名曲「ジュピター」を含むことで知られるホルストの組曲「惑星」(全7曲)に、新たな楽章が加わる。テーマは太陽系を離れ、はるか銀河の旅に出た「ボイジャー」。1977年に打ち上げられ、今、電池の残りがわずかとなった無人宇宙探査機の功績をたたえ、7月7日、墨田区のすみだトリフォニーホールで新日本フィルハーモニー交響楽団が世界初演する。
…さらば太陽系、さらば地球よ。われら、再びテラ(地球)の地を踏むことはないだろう。されど、われら太陽の勇者。故郷の記憶をしかと胸に抱き、新しい旅へ出よう。さようなら皆さん。愛する故郷よ…
今月15日、同ホールで行われた新曲のデモ演奏。もの悲しくも美しい旋律の曲中歌「さらば地球よ」が英詞で披露され、ソプラノ歌手の秋本悠希さんが、透き通った歌声を響かせた。
◆宇宙の旅を擬人化
曲では擬人化したボイジャーが宇宙を旅し、見知らぬ生命体や散在する星と出合う。地球を離れ、「二度と戻ることはない」とさみしさを抱きつつ、人類の夢と希望を乗せた冒険者の姿をドラマチックに描く。
組曲「惑星」は火星、金星、水星、木星、土星、天王星、海王星の7曲から成り、これまでも追加曲として小惑星や冥王星をテーマにした曲が作られてきた。今回はボイジャーの電池が尽きる前に曲にしたいと、音楽プロデューサーの小沢陽さん(65)が企画。ホルスト生誕150年の今年に向け、ホルストが講師を務めた米ハーバード大出身で新潟大教授の作曲家、清水研作さんに昨春、作曲を依頼した。
「ボイジャーが長い年月をかけて旅する様子を響きの世界で具現化した。動画的な流れをつくり、さみしさ、悲しさを表現した」と清水さん。100人以上の大編成で、ホルンは9本、珍しいワーグナーチューバは4本も入る予定。桐朋学園大などの女声合唱や、パイプオルガンも付き、初演時には大編成の指揮を得意とする、シズオ・Z・クワハラさんがタクトを握る。
ボイジャーは、地球外の知的生命体に遭遇した場合に備え、「ゴールデンレコード」という金を張った銅製レコードを実際に搭載している。ベートーベンの「運命」などの音源も刻まれており、新曲にはそれらのモチーフを織り交ぜた。
新曲発表会には、宇宙の専門家たちも登壇。宇宙航空研究開発機構(JAXA)名誉教授の的川泰宣さんと国立天文台上席教授の渡部潤一さんが、太陽系と、ボイジャーの打ち上げについて説明。墨田区に工場を置き、スペースデブリ(宇宙ごみ)を取り除く事業に取り組む「アストロスケールホールディングス」最高経営責任者(CEO)の岡田光信さんは「200億キロメートル離れた世界を音楽でどう表現するのか楽しみ」と期待を寄せた。
公演は全席指定、S席6千円、A席5千円。申し込みはすみだトリフォニーホールのホームページかチケットセンター=電03(5608)1212=へ。
<ボイジャー> 米航空宇宙局(NASA)による太陽系の外惑星および太陽系外の無人宇宙探査機。1号は1977年9月5日に打ち上げられ、木星と土星とその衛星を観測。2号は同年8月20日に打ち上げられ、1号が訪れた惑星に加え、天王星と海王星を観測した。各惑星の新しい衛星や、木星、天王星、海王星の輪を発見。現在は地球から200億キロメートル以上離れた宇宙空間にいる。
文・鈴木里奈/写真・由木直子
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