米グーグルとメディアの間ではこれまでさまざまな駆け引きがあったが、最新の動きはカナダ政府が近く、施行するとされる「オンラインニュース法(C-18条)」だ。これはグーグルなどが検索結果に表示するニュースについて、メディアに対して料金を支払うというもので、別名「リンク税」とも呼ばれている。
リンク税に関しては、夏前からカナダ政府とグーグルや米メタとの応酬合戦があった。両社は「そんな税金を払うくらいならば検索結果にニュースが表示されるのを中止する」と脅し、実際メタはそうした処置をとったままだ。一方、グーグルはカナダ政府との交渉を続けて税額を減らした上、メディア協会のような単一組織と契約するなどの内容で落ち着いた。その結果、グーグルは年間1億カナダドル(約110億円)を支払うことで合意したという。
そもそもリンク税は、オンライン時代に苦悩するメディアを救おうという動きの中で提案された。その意味では好ましい結果とも思えるのだが、実際には批判が方々で起こっている。
グーグルやメタは、検索結果やフィードの中でニュースのタイトルや内容の一部を表示してきた。ユーザーがニュース全体を読みたい場合はクリックしてメディアサイトに飛び、そこで読み続けることができる。グーグルによれば、毎月約240億回のクリックによってユーザーがグーグルのサイトからメディアサイトに飛んでいたという。
別の数字によると、ローカルニュースに特化した地元の小さなメディアでは、トラフィックのほぼ50%がグーグルやフェイスブックからもたらされていた。グーグルやメタがリンク税に反対してニュースへのリンクを取り除いてしまったら、読者数が激減するメディアサイトが増え、ユーザーとしても名前の知られていないメディアサイトに接する機会を失うのだ。
つまり、グーグルやメタのリンクはサイトへの窓口として機能している上、検索結果に表示されているのも内容を横取りしたようなものではなく、ほんの一部に過ぎなかった。そこに税金を課すのはいかがなものかという疑問があるだろう。他にもリンクを無料で表示することを許している企業が無数にあるのに、なぜメディアだけが、というグーグルの言い分ももっともなことだ。
また、その合意内容にもアンバランスなことが見受けられる。リンク税の合意の中でグーグルは多数のメディアと契約する代わりに単一の組織とやり取りすることになる。その中での支払金の配分はフルタイムのスタッフ数に応じてということになるとされている。自然と大規模のメディアへ資金は集中することになり、ローカルニュースを報じるメディアの苦境は止まらないだろう。
さらに大きく言えば、オープンなインターネットのあるべき姿から見ると、今回の動きがふさわしいのかという点も重要だ。グーグルやメタがニュースによって多くの広告収入を得ていることは確かだが、もっといい方法はないものだろうか。今や公共的な性質を持つ検索やニュースだが、それらをどう取り扱うのかは我々にとってまだ未知の領域なのだ。
[日経MJ2023年12月10日付]
からの記事と詳細 ( グーグルに記事対価「リンク税」、メディアの苦境救うか - 日本経済新聞 )
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