2023年10月17日、Intelの最新デスクトップ向けCPU「Intel Core プロセッサー (第14世代)」が発売となった。今回登場したのはいわゆる“K付き”モデルで、Core i9-14900K/KF、Core i7-14700K/KF、Core i5-14600K/KFの6モデル。ここでは、早速入手できた最上位のCore i9-14900Kと前世代のCore i9-13900Kで性能がどう変わるのか、パワーリミットの設定や新たに追加された「Intel Dynamic Tuning Technology」の効果など、ベンチマークテストで検証していく。また、Core i9-14900K/KFだけで使えるAIによるOC機能「AI Assist」も試してみた。
コア数やプロセスなどは据え置き、クロックは向上新たな機能追加で使い勝手や性能向上を図る
Intel Coreプロセッサー (第14世代)の詳細については2023年10月16日に発表されているが、改めてCore i9-14900KとCore i9-13900Kのスペックを紹介しておこう。
CPU | Core i9-14900K | Core i9-13900K |
実売価格 | 110,000円前後 | 91,000円前後 |
製造プロセス | Intel 7 | Intel 7 |
Pコア数 | 8 | 8 |
Eコア数 | 16 | 16 |
スレッド数 | 32 | 32 |
定格クロック | 3.2GHz(Pコア)、2.4GHz(Eコア) | 3GHz(Pコア)、2.2GHz(Eコア) |
最大クロック | 6GHz(Pコア)、4.4GHz(Eコア) | 5.8GHz(Pコア)、4.3GHz(Eコア) |
3次キャッシュ | 36MB | 36MB |
対応メモリ | DDR5-5600、DDR4-3200 | DDR5-5600、DDR4-3200 |
PBP | 125W | 125W |
MTP | 253W | 253W |
内蔵GPU | UHD Graphics 770 | UHD Graphics 770 |
CPUクーラー | なし | なし |
ここに見える目立った違いは13900Kに比べてクロックが200MHz引き上げられた点。製造プロセス、コア数、3次キャッシュ容量、対応メモリ、消費電力の目安であるPBP/MTP、内蔵GPUまですべて変更がない。マザーボードに関してもIntel 600/700シリーズが利用でき、新たなチップセットは登場しなかった。スペックの変化としてはわずかと言える。
機能面での強化ポイントとしては、Intelの一部ノートPCに搭載されているシステムに合わせてパフォーマンスを最適化する「Intel Dynamic Tuning Technology」(以下DTT)が取り入れられ、さらにそれを活用してゲームやアプリの性能を向上させる「Intel Application Performance Optimization」(以下APO)が追加されている点が最大の特徴。
とくにAPOについては利用にゲーム/アプリ側の対応が必要で、現時点では「レインボーシックス シージ」と「Metro Exodus」の2タイトルが対応している。APOを利用することで前者が13%、後者が16%性能がアップすると言うので効果としては期待できる。今回は実際にこれもテストしてみた。
なお、Intelはゲーム会社と積極的に協力しているとのことで、APO対応タイトルは近日中に増えるという。
パフォーマンス重視ならDTTの使いどころはやや難しい?効果アリなAPOは今後の普及に期待
それでは実際の性能をチェックしていこう。Core i9-14900Kはパワーリミット無制限と定格の253W(PL1、PL2)設定、そしてそれぞれにDTTを有効にした場合でテスト、Core i9-13900Kについてはパワーリミット無制限と253W設定とした。第13世代Coreは現在のところAPOの対応に含まれないためだ。検証環境は以下の通り。
マザーボード | ASRcok Z790 NOVA WiFi(Intel Z790) |
メモリ | Kingston FURY Beast DDR5 KF556C36BBEK2-32 (PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2) |
SSD | Samsung 980 PRO MZ-V8P1T0B/IT [M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB] |
ビデオカード | NVIDIA GeForce RTX 4090 Founders Edition |
CPUクーラー | Corsair iCUE H150i RGB PRO XT (簡易水冷、36cmクラス) |
電源 | Super Flower LEADEX V G130X 1000W (1,000W、80PLUS Gold) |
OS:Windows 11 Pro(22H2) |
まずは、CGレンダリングでCPUパワーをシンプルに測定する「CINEBENCH 2024」と「CINEBENCH R23」から試そう。
パワーリミット無制限で14900Kと13900KのMulti Coreを比べるとわずか約1.4%の差。253W設定同士では約4.4%の差となった。253W設定のほうが“200MHzの差”が出やすいようだ。なお、DTTについてはパワーリミット無制限ではSingle Core、253W設定ではMulti Coreでスコアの低下が見られた。
CINEBENCH R23では、Multi Coreを見るとパワーリミット無制限で約2.2%の差、253W設定では逆に13900Kのほうが約0.4%上回るが、この程度の値は誤差の範疇だろう。CINEBENCH 2024と異なり、DTTによる影響はほとんど見られなかった。
次に一般的な処理でPCの基本的な性能を測る「PCMark 10」を見ていこう
パワーリミット無制限で14900Kと13900KのStandardスコアを見ると約2.7%向上、253W設定では約1.3%の向上となった。DTTを有効化すると、すべてのテストでちょっとずつのスコア低下が確認できる。DTTは、元々はノートPCのバッテリ駆動を含めたパフォーマンスの“最適化”機能なので、性能を劇的に伸ばすようものではないようだ。
続いて3D性能を測る定番ベンチマークの「3DMark」からDirectX 12ベースのTime Spyを実行しよう。
GPU性能の影響が大きいため、総合スコアで見ると誤差レベルだが、CPUのスコアを見ると14900Kの強さが分かる。また、このテストではDTTの影響がハッキリ出ている。GPU性能を見るGraphicsのスコアが10%以上もダウンしてしまった。
ここからはクリエイティブ系のアプリに移ろう。まずは、実際にAdobeの画像編集アプリであるPhotoshopとLightroom Classicを利用してさまざまな画像処理を行なう「UL Procyon Photo Editing Benchmark」を試す。
パワーリミット無制限の14900Kがトップとそこは順当と言える結果だが、Photoshop中心のImage Retouchingのブレが大きく、DTT無効時では大きな差は見られなかった。しかし、DTT有効時はLightroom Classic中心のBatch Processingのスコアに低下が見られた。
次はエンコードアプリの「HandBrake」で4K解像度で約3分の動画をフルHD解像度のH.264とH.265へと変換するのにかかった時間を測定した。
ここは14900Kのパワーリミット無制限による高クロック動作が効いているのが分かる結果だ。ここではDTTの影響は見られない。DTTの効果、影響は利用するアプリや処理内容によって変わってくる、ということだろう。
続いてゲームでの性能を見てみよう。ここではDTTの有効化が必要なAPOに対応する「レインボーシックス シージ」と「Metro Exodus」を用意。実際の性能が向上するのかチェックする。レインボーシックス シージはゲーム内のベンチマーク機能を利用、Metro Exodusはゲームのインストールフォルダ内にベンチマーク用アプリが用意されているので、それを実行している。
なお、テストについては、GPUがボトルネックになることを防ぎCPUの差だけを見るために画質を最低水準まで落とした状態と、一般的なプレイ状況に近付けるために最高画質に設定した状態の2パターンを計測している。
レインボーシックス シージはAPO対応タイトルだけあり、DTTを有効化するとパワーリミット無制限では画質低で約15%、画質最高でも約7%のフレームレート向上を確認。253W設定でも画質低で約14%、画質最高で7.5%アップした。APOは確かな効果があり、対応タイトルの増加を期待したくなる結果だ。
Metro Exodusも似た結果だ。DTT有効時はパワーリミット無制限では画質Lowで約31%、画質Extremeでは約5.6%の向上、256W設定でも画質Lowで約34%、画質Extremeで約4.6%のフレームレート向上が見られた。APOは対応タイトルでは非常に有益だ。
最上位モデルだけの飛び道具「AI Assist」で性能をさらに絞り出せるのか
次は現在のところ14900Kと14900KFだけで使えるAIによるOC機能の「AI Assist」をテストしてみよう。Intelの公式CPUチューニングツールである「Intel XTU」をインストールすることで利用できる機能だ。IntelのラボでCPU、マザーボード、メモリ、クーラーなど多彩な組み合わせで学習されたAIモデルを使って最適なOC設定を行なうという。ただし、AIでもOCには変わりなく、利用は自己責任になる点は覚えておきたい。
基本的にはCPUの倍率アップとパワーリミットのアップを中心としたOCになるので、パワーリミットをそもそも無制限にした環境ではOCをしてもほぼ効果が見られなかった。その一方で253W設定ではAI Assistを使うことでスコアが向上。OCの効果はあったと言える。
とはいえ、性能を引き出したかったら最初からパワーリミット無制限で使うほうが手っ取り早くもある。通常はパワーリミット253Wで運用、ここぞというときにOCで気合を注入、といった使い方がありそうだ。
パフォーマンスと電力&温度のバランスはパワーリミット253W設定での運用がおいしい!?
最後に温度、クロック、CPU電力の推移をチェックしておこう。CINEBENCH 2024のマルチコアテストを10分間実行した際の推移をモニタリングアプリの「HWiNFO Pro」を追った。CPU温度は「CPU Package」、CPUの消費電力は「CPU Package Power」、クロックは「P-core 0 T0 Effective Clock」の値だ。室温は24℃。簡易水冷クーラーはiCUEアプリの「安定」設定で実行している。
CPU温度は、パワーリミット無制限だと14900Kと13900Kとも速攻でリミットの100℃に到達。その後は高負荷中はほぼ100℃前後での動作になるのも前世代と同様の挙動である。
また、簡易水冷クーラーのファンを最初から100%にしてテストをスタートさせても100℃に到達するまでの時間が30秒ほど延びるだけで、ほぼ100℃前後で推移するのは変わらなかった。パワーリミット無制限で運用するなら、より強力な冷却装備を用意してガンガン冷やすか、100℃になることをある程度許容して折り合いをつけていくか、ということになるだろう。
一方で、253W設定ではクロックが高いはずのは14900Kのほうが13900Kよりも低い温度で推移するのがおもしろい。253W設定ならリミットの100℃に到達することはなかったので、36cmクラスの簡易水冷クーラーなら安心して運用できると言える。性能と発熱(=使い勝手)のバランスはなかなかよいものと言えそうだ。
クロックでは、パワーリミット無制限では14900Kと13900Kはスペック通り、ほぼ200MHzの差で推移した。253W設定では100MHz程度の差で推移することが多い。253W設定では性能を今一歩絞り出し切れていないと見るべきだろう。
続いてCPUの電力推移となるCPU Package Powerだ。253W設定では、ほぼ253W前後で推移とリミットいっぱいで動作しているのが分かる。パワーリミット無制限では、14900Kは315W前後と13900Kよりもおおむね20Wアップで推移。消費電力を引き換えに、性能を稼いでいるのが見える部分だ。
進化は見られるが現時点でのスコアアップは限定的新機能へのアプリ対応に期待
以上、新旧i9の最初のテストレポートは以上だ。14900Kは13900Kを数%上回るケースが多く、200MHzの性能アップは効いていると言ってよいだろう。ただし、差がそこまで大きなものではないので、第12世代や第13世代のハイエンド環境を使っていたユーザーが乗り換えるには少々物足りないかもしれず、もっと古い世代から、あるいはi7以下の環境からの乗り換え向きと言えそうだ。
新機能であるDTTは有効化するとスコア低下が起こることもあり、性能向上が望めるAPO対応タイトルが増えるまではUEFIで無効のままでもよいのではないだろうか。対応タイトルでの効果を見る限り、対応さえ進めばAPOには期待できるので、このあたりは今後の動向を見守りたい。
第14世代Coreプロセッサーをライブでレビュー!Core i9-14900Kの6GHz動作をいち早く目撃せよ【10月17日(火)22時配信開始】
第14世代Coreプロセッサーをライブでレビューします。特長、スペック、ラインナップの解説、ベンチマーク検証、実動デモを交えて詳しくお届け。解説はKTUこと加藤勝明氏、MCは改造バカこと高橋敏也氏です。(配信終了後は即アーカイブを視聴可能になります)
【Intel第14世代Coreプロセッサー登場!ラインナップ&特徴を解説!】
からの記事と詳細 ( “Raptor Lake Refresh”こと「Intel Core プロセッサー (第14世代)」が登場!新旧Core i9を徹底比較!! Core i9-14900Kを早速入手、新搭載のDynamic TuningやAI Assistも試す text by 芹澤 正芳 - AKIBA PC Hotline! )
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