2月22日に発売の迫る新型VRヘッドセット「PlayStation VR2(PSVR2)」。現時点で多くのVRタイトルが発表され、日を追うごとに新情報が増えている状況だ。
しかし、これまでVRにあまり触れてこなかった人にとっては「自分が買ったとして、本当に楽しめるのか?」が気になるところではないか?
初代のPSVR発売当時と比べると、ゲームを単体で遊べる安価なVRヘッドセットが増えているため「わざわざ高級なものを買わなくても……」と思っているVRユーザーもいるだろう。また、PS5の購入が必須となっている時点で「どうせPS5を持ってないから関係ないな」と、体験前からすでに諦めている人も決して少なくないと思う。値段も決して安くはない。74,980円(税込)。PS5込みで購入を検討する際、本当に必要なのかも迷うところだ。
もちろん、そうした声があるのは重々承知。ただ、少し待ってほしい。先行体験レビューのため、PSVR2を約3日間ほど遊んでみて気づいたことだが、今回のデバイスは「最近ゲームを夢中で遊べなくなってしまった人」には非常に強く刺さるはずだ。
また「ゲーム自体が大好き」「ゲームの世界に入りたい」という気持ちがある人にも、ぜひ体験してほしいと言い切れる。
この際「VRやったこと無いから」「VRゲームと普通のゲームは何か違うから」といった考えは一旦頭の隅においやったほうが良い。「これまでに無いようなゲーム体験を味わってみたい」という気持ちがあるか否かで、購入を判断するのが適切だと思う。
なぜ、そう思ったのか? 具体的にPSVR2をセッティングして、色々な機能を試してみて、さらに「Horizon Call of the Mountain」を集中して遊んだ感想を交えつつ、紹介していこう。
セッティングからゲーム開始まではサクサク、なぜなら……
「そもそも、PS5にPSVR2を接続してセッティングするのって何だか難しそう……」と思っている人がいるなら、その心配は不要だと伝えたい。用意しておくのは、下記の3点だけで良い。
・PS5本体
・PSVR2&コントローラー
・PS5本体とコントローラーを繋げるケーブル(付属品でOK)
(PS5横に差し口ががあるので、ひとつはPSVR2用、もうひとつはコントローラー用に)
手順は①PS5を起動する→②PSVR2のケーブルをPS5本体に差し込む→③PSVR2の電源ボタン(自分の鼻の先にある)を押す、ができればOK(※ここまでの手順でPSVRを被る必要なし)。あとは普通のモニターに出てくる説明書きの指示どおりに進めていけば大丈夫。
このセッティングまでの説明がしっかり分かりやすい。ヘッドセット本体を被ってからは、VR上での見え方の調整や、アイトラッキング(目線の同期)の調整、体験する周囲のエリアの調整といった細々とした設定が入るのだが、画像や映像などで順序良く説明してくれる。
強いて上げるとすれば、メガネのままプレイする人は、IPD(視点間距離)の調節で少し手間取るかもしれない。IPDとは、自分の目と映像の映るレンズの距離のことで、ここがうまく定まっていないと、視界がボヤっとしてしまったり、ゲーム上の説明文が読みにくくなってしまう。この調整の際、レンズの分厚い眼鏡をつけた状態だと若干合わせるのが難しいのはしょうがないところだ。
しかし、画面上では自分の目がレンズの中に収まっているかを映像で表示してくれるので、少しゆっくり調整すれば、どうしても合わせられないことは無いはず。その後のアイトラッキング(目線の同期)も同様で、自分の瞳が今どこを向いているのかを映像の中で伝えてくれる。
こういった調整は、既存のVRヘッドセットだと何となくのカンで調整してしまうことも少なくなかったので、「こちらの顔をしっかり認識してくれている」といった安心感はとても良かったと思う。なお、どうしても違和感があれば、後々設定画面で細かい変更は可能だ。
そして、ホーム画面が映し出されれば、あとはこちらのものだ。なぜならPS5のホーム画面と、PSVR2のホーム画面は、ほぼ同じものが映し出されているからだ。要するに、普段PS5で遊んでいるときのように、ゲームやコンテンツを自由に選べるのである。
つまり、PSVR2のデフォルト画面は真っ黒い空間のなかにPS5のメニューがあるという、他VRヘッドセットに比べればシンプルすぎる構成だ。味気ない気もするが、これのおかげで初心者はまず迷わない。PS5のメニューに慣れてさえいれば、いちからメニュー画面を覚える必要が無いので正直楽だ。こうした余計なものの無さが、セッティングまでのスムーズさにつながっていると思う。
初心者が最初に遊ぶべきは「シネマティックモード」
準備はできただろうか? では、VR初心者が最初に遊ぶべきゲームは「Horizon Call of the Mountain」……ではない。
まずは握っているだろうPSVR2用のコントローラーを机に置いて、通常のPS5用のコントローラーを握り直してほしい。そして、最初は何でも良い。自分が好きな「VR対応じゃない普通のゲーム」を起動してみよう。
あらためて説明しておくと、PSVR2では、VRに対応していない普通のゲーム(PS5のゲーム)を遊ぶための「シネマティックモード」という機能がある。これは初代PSVRにも搭載されていた機能で、ゲームだけでなく動画視聴サイトなどにも対応しており、目の前に映し出される大型スクリーンで、ゲームを遊んだり、映画を観賞したりできる。
「普通のスクリーンがあれば、わざわざVRで観る必要は無いのでは?」と思う人もいるだろう。体験前は著者もそう思っていた。しかし、今回の「シネマティックモード」は映像がなめらか。具体的には「120Hz」のフレームレートに対応しているコンテンツを体験できる。この「120Hz出力」がポイントで、一世代前のテレビやモニターを使って普段ゲームしている人にとっては「PSVR2の方がなめらかな映像を体験できる」ことになるのだ。
画面の大きさも十分。4Kとまではいかないまでも、周囲の暗い空間に大きなスクリーンが映し出されているので、画面に集中しやすい。個人シネマのようなリッチ感がある。周囲のモノの多さに気が散って、ゲームを満足に楽しめないという人にもおすすめだ。
実際に著者も「アストロ プレイルーム」をPSVR2で遊んでみたが、このプレイはかなり快適だった。今回のPSVR2はヘッドセット本体の重量バランスがちょうど良いので、重いものを被っている不快感が少ない。なので、2時間ほどプレイしても「そろそろ外したいな……」といった気持ちにならなかった。
そして、初心者に「シネマティックモード」を最初に勧める理由だが、普通のゲームをプレイしているうちにPSVR2の体験そのものに慣れていく感覚があるからだ。
たしかにいきなり強烈なVRコンテンツを体験したほうがインパクトは強いのだが、その分、ちょっと操作に不慣れであったり、映像に目がついていかなかったりして、VRに慣れる前に「自分には合わないかも」と諦めてしまう可能性がある(著者の周囲でもそういった経験を持つ人がこれまで少なくなかった)。
「シネマティックモード」は映像が固定されているので「自分がどこを見ていて、何を操作しているのか」に混乱することがない。まずは、このモードで少しずつ目を慣らしていき、その上で本格のVRゲームに挑戦するほうが良いだろう(※もちろん、歴戦のVRゲーマーはこの過程を飛ばしても良いが「シネマティックモード」自体は一度体験してみてほしい)。
PSVR2をゲーム好きが体験した方が良い理由は「触覚」
ある程度慣れたら、コントローラーをVR用に持ち替えて、「Horizon Call of the Mountain」をプレイしてみよう。もちろんこの作品以外から始めても大丈夫だが、PSVR2の同梱版として収録されていること、後述するがPSVR2向けにかなり細かく調整された作品であることを踏まえ、今作を最初に選ぶのをおすすめする。
このゲームは、人気シリーズ「Horizon」に連なる作品で、オープンワールドアクションRPGとして特に海外では非常に高い評価を得ている。人類文明の崩壊した1000年後の地球が舞台で、巨大な機械生命体が闊歩(かっぽ)する中、人類は非常に原始的な生活を余儀なくされている。そのため、武器は弓がメイン。移動は徒歩とクライミング。落ちている果物で回復しながら、大型機械と戦うという非常にワイルドなゲームだ。
このシリーズをプレイしたことがあれば、前作とのつながり(主人公アーロイの登場など)などに驚いたりもできるのだが、ひとまずこの作品がシリーズ初見プレイであっても問題はない。物語や世界観にも追々慣れていけば良い。肝心なのは、このゲームの「ゲーム体験そのものの良さ」だろう。
冒頭、川を進むボートのシーン。ここからすでにグラフィックのクオリティに驚かされる。美しい。おそらく画像を切り貼りしても、この美しさを再現するのは難しい。見渡すかぎりの広大な自然。「本当にこういう世界に来てしまった」という感動を強く感じさせる。何よりも透き通った水のきれいさ。最近のゲームでも水の表現は日々洗練されていっている印象だが「実際に顔を近づけて水を見る」というアクションができることも相まって、その美しさが特に印象に残る。
そして、巨大な機械生命体たちが眼の前を横切って行く際の迫力、無数の小型機械に囲まれた際の緊張感も尋常ではない。なぜなら、両手のコントローラーはもちろん、ヘッドセット本体も振動があり「近くに何かがいる」という感覚を、視覚ではなく触覚で伝えてくるからだ。
著者は今回のPSVR2の最も注目すべきポイントは「触覚への振動表現」だと思っている。発売前からVRヘッドセット自体に振動機能があることは伝えられていたが、正直それがどういう意味を持つのかを深く理解できていなかった。しかし、これによって「背後を何かが横切った感覚」や「自分が何か大きな衝撃を受けた」といった感覚をハッキリと受け取れるのである。
正直、この振動表現があるだけで、ゲームの体験の満足度は相当大きく変わる。つまり、かなり夢中でゲームに没入できるようになる。こういったタイプのVRゲームは多く体験してきたはずだが、振動表現の追加によって「これまでに無いようなゲーム体験」へと変わってしまっている気がした。
ボートが揺れて水に落ちてしまったときや、死角から敵が襲いかかってきたときの緊張感は、視覚と聴覚、そして触覚がそろった上で初めて「本当にそうだった」かのように感じられるのである。
もちろん、これまでのVRデバイスにも振動機能はあり、場面ごとに衝撃を伝えるという表現がさまざまなかたちで取られてきたが、特にPSVR2の「Horizon Call of the Mountain」は、触覚の表現に関しては、これまでのコンテンツの中でも抜群に洗練されていると思う。おそらく、PS5の「DualSense ワイヤレスコントローラー」で培われた触覚の技術が活用されているからと言えるだろう。振動表現の進化が、今後のゲーム体験の満足度を大きく上げる要因のひとつになると思う。
初心者は皆、山に登れ
話を「Horizon Call of the Mountain」に戻そう。このゲームは基本的にアクションゲームなので、ひたすら道なき道を移動することになる。はっきり言えば、ゲームの70%は「山登り」だ。絶対登れなさそうな断崖絶壁や、廃墟となった集落の屋根上、底の見えない洞窟など、ありとあらゆる場所を登る。
これがボタンひとつで操作できれば手軽だったが、VRではそうはいかない。自分が両手を伸ばし、掴めそうな出っ張りを探しながら、コントローラーで握り、上や横へと進んでいく。
これが正直、大変だ。「まるで登山みたい」なんてレベルではなく「本当に登山」だ。片方の腕で出っ張りをつかみ、もう一方でさらに上へ……。汗が止まらない。下を見ると、ヒヤリとする。登れそうな場所は白いラインのようなものが見えるので、なんとなく分かるものの、時折「この道を登っても先に進めない?」といったポイントもあり、絶望することも。
移動自体も(設定で変更はできるが)基本的には自分の腕を大きく振ると、その方向に歩けるというスタイルのため、ただ歩いているだけでも(現実側の)体力を使う。これはもう、本当のサバイバルを体験していると言っても過言ではない。ちなみに初プレイしてから3日、未だに筋肉痛が続いている。
操作は大変だが「VRゲームでの操作方法に慣れるための練習」という点では、このゲームはかなり親切だ。コントローラーのどのボタンを押せばどんなアクションになるのかをチュートリアルで丁寧に説明してくれるし、練習ポイントのような場所が複数あるので、プレイするほど直感的に動かせるようになる。
機械との戦闘は、基本的に弓矢攻撃。「機械に対して、弓矢……?」と困惑してしまうが、それが「Horizon」シリーズなのだと言われれば仕方ない。弓をグイッと引いて、標的に向かって放つアクションも、現実の弓矢そのまま。しっかり狙わないと外れるし、背中から矢を取り出して構えるまでのアクションの間に攻撃されることもある。なんと過酷な世界なんだ……。
「Horizon Call of the Mountain」にここまで身体を動かす要素が多いのは、恐らく意図的なものだろう。VR空間の中ではどのような動きが必要なのかをこちらに紹介するようなゲームなので、このゲームさえ慣れてしまえば、他のVRゲームでもかなりサクサク動けるようになると思う。
VRゲームに慣れるための少し厳し目のブートキャンプだと思えば良いかもしれない。逆にこのゲームを難しいと感じるのであれば、「ビートセイバー」などの従来の定番ゲームから体験するのも悪くないだろう。
結局、PSVR2はおすすめできるのか?
冒頭でも触れたとおり、「最近ゲームを夢中で遊べなくなってしまった人」「ゲームの世界に入りたい人」「これまでに無いようなゲーム体験を味わってみたい」という欲求があるなら、ぜひ購入してほしいと思う。映像の滑らかさ、体験中の没入感、セッティングまでのスムーズさ、個々の要素を踏まえていくと、VRゲーム初心者には現状最適と言えるだろう。
何より「VRの映像×触覚の振動表現」の組み合わせは、他のVRヘッドセットとは一線を画す仕上がり。これまでVRを体験したことが無かった人ほど、この技術には衝撃を受けるはずだ(もちろん既存のPC系のVRヘッドセットに別のデバイスを組み合わせて、限りなく近いものを再現することも不可能ではないだろうが、その手間や費用を考えと、断然PSVR2を買った方がいい)。
今後PSVR2のこうした特徴を生かしたコンテンツが続々と発表される(公式予告では100作以上制作中)ことを考えると「こんな表現まで楽しめるのか!」といった驚きはかなり残されているだろう。もちろん、ゲーミングPC系のコンテンツよりもPS5系のコンテンツが好きな方にもおすすめ。カプコンなどの有名企業のタイトルは今後おそらくPSVR2で優先的にリリースされることになる。
逆に、現状のゲーム体験やVR体験に満足してしまっている人には刺さるポイントが少ないかもしれない。またVRChatのようなメタバース系のサービスも現状では実装される予定はないので、バーチャル空間での人とのコミュニケーションを期待している人には不向きであると言える。PSVR2は、PS5のさらなる魅力を引き出すための一要素という立ち位置のデバイスだからこそ、その「さらなる魅力」の部分にどこまで興味が持てるか次第だ。
気になるようであれば、販売後にイベントなどで体験したり、知人の誰かに触らせてもらう方が良い。VRヘッドセットは、実際に体験してみないと凄さがなかなか伝わらないという宿命を背負ったデバイスなので、できれば直接体験できる機会が全国各地で用意されてほしいところだ。
個人的には先行レビューを体験したことで、プライベート用のPSVR2をかなり欲しくなっている。有言実行として、この原稿を執筆中、プライベート用のPS5をさっそく購入した。今後どのような最高のゲーム体験が用意されているのか、期待しながら待ちたい。
からの記事と詳細 ( PSVR2は“ゲーム体験を最高のものにしたい人”に向けて開発されたデバイスだ【体験レビュー】 - Mogura VR )
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科学&テクノロジー
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