内部で新たな星の誕生が止まってしまった銀河をアルマ望遠鏡で観測したところ、別の銀河と衝突合体したことで星の材料となるガスが放り出されてしまったことがわかった。
【2022年9月6日 アメリカ国立電波天文台】
私たちの天の川銀河では今でも新しい恒星が生まれているが、他の銀河では星の形成が止まってしまったものもある。星の材料となるガスがなくなってしまったのだと考えられるが、どうしてそうなったかについては様々な議論がある。
うしかい座の方向70億光年の距離にある大質量銀河SDSS J1448+1010(以降SDSS J1448)も燃料切れとなってしまったようだ。この銀河は別の銀河との衝突合体を経たばかりで、その際に重力によって引っ張り出されたガスや星が尾を形成している。その長さは64kpc(約21万光年)にもなる。米・テキサスA&M大学のJustin Spilkerさんたちの研究チームがハッブル宇宙望遠鏡(HST)とアルマ望遠鏡で観測した結果、この尾に大量のガスが持っていかれたことが判明した。
「この大質量銀河が興味深かったのは、どういうわけか、爆発的な星形成の直後、約7000万年前に突然星形成を停止したことです。ほとんどの銀河はそのまま星形成を続けるにもかかわらずです。アルマ望遠鏡とHSTによる観測から、この銀河が星形成をやめた本当の理由は、合体の過程で星形成に必要なガスの約半分が銀河間空間に放出されたためであることが明らかになりました。燃料がなくなったため、銀河は星を作り続けることができなくなったのです」(Spilkerさん)。
この発見は、星形成がどのように停止し、銀河がどのように死滅するかについての長年の理論を覆すものといえる。 ただし、たった1つの観測から得られた結果であるため、銀河どうしの相互作用の結果として星形成が止まることがどの程度一般的であるかは、今のところ不明だ。
「これまで天文学者が想定していた銀河の星形成を止める唯一の方法は、猛烈で速いプロセスでした。たとえば、銀河の中でたくさんの超新星爆発が起こって、ガスの大半を外に吹き飛ばして、残りを加熱してしまうことです。今回の観測から、『派手な』プロセスでなくても星形成を止められることがわかりました。もっとゆっくりな合体によっても、星形成と銀河に終止符を打つことができるのです」(Spilkerさん)。
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