ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の初期観測データから、宇宙誕生の約2億3500万年後に存在した銀河と考えられる天体が見つかった。確認されれば観測史上最遠となる。
【2022年8月9日 エジンバラ大学】
2021年12月に打ち上げられたジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は2022年6月から科学観測を開始し、7月12日にはNASAによってファーストライト画像が公開された(参照:「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の初成果」)が、初期観測データの解析が早くも始まっている。
JWSTの運用を行う宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)では、世界の研究者にJWSTの利用に習熟してもらうため、最初の5か月間に「初期リリース科学プログラム(ERS)」という観測枠を設けて、この枠で行う観測の提案を2017年に13件採択した。ERSで得られた観測データには、提案したチームがデータを独占利用できる期間は設定されていないため、ここで得られたデータの解析は「早い者勝ち」の競争になる。
7月19日には、米・ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのRohan Naiduさんを中心とするチームが、ERSの2件の観測プログラム「Through the Looking GLASS(GLASS-JWST)」と「宇宙進化初期リリース科学サーベイ(CEERS)」から得られたデータを使い、赤方偏移zが10を超える銀河の候補として、ちょうこくしつ座の方向にある天体「GLASS-z13」(z = 12.4-13.1)と「GLASS-z11」(z = 10.6-10.9)を発見している。
遠方銀河からの光は、長い旅の間に宇宙が膨張するため、波長が伸びて赤くなる。この赤方偏移が大きいほど、昔の宇宙から届いた光だということになる。Naiduさんたちによるzの推定値が正しければ、GLASS-z13はビッグバンで宇宙が誕生してから約3億年後の銀河ということになる。これまでに知られている最も遠方の銀河は「GN-z11」で、その赤方偏移はz = 10.957(ビッグバンから約4億年後)だった(参照:「134億光年彼方の銀河を同定、観測史上最遠記録を更新」)。
さらに今回、英・エジンバラ大学のCallum Donnanさんを中心とする研究チームは、GLASS-JWSTとCEERSのデータに加えて、JWSTの初期リリース画像の一つでもあった銀河団「SMACS 0723」の観測データも使い、これにヨーロッパ南天天文台のVISTA望遠鏡によるサーベイ観測データを組み合わせることで、さらに遠いz = 16.7の銀河と思われる天体「CEERS-93316」をうしかい座の方向に発見した。これは、ビッグバンからわずか2億3500万年後の時代に存在する銀河が見えたことになる。
Donnanさんたちは44個の新発見を含め、zが大きな銀河らしき天体を55個分析しており、そのうち6個がz = 12を超えているという。
ただし、これらの遠方銀河候補のzはどれも、いくつかの波長域で撮影された像の明るさをモデルに当てはめて推定された「測光赤方偏移(Photo-z)」と呼ばれるもので、GN-z11のように天体のスペクトルを分光して正確に求められた赤方偏移ではないため、信頼性の面でやや劣る。JWSTではz = 20を超える遠方銀河も観測できる性能があるとされていて、今後は分光観測によってさらに確度の高いデータが得られることが期待される。
「JWSTによって、135億年前よりさらに昔の、宇宙で最初に生まれた恒星や銀河の形成を見ることができます。これは、今後数週間、あるいは数か月・数年の間に行われるであろう重要な観測の始まりにすぎません」(Donnanさん)。
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