深センのOne-Netbook Technologyが発売する「ONEXPLAYER mini Ryzen版」は、7型ディスプレイを搭載するスレート型ゲーミングUMPCだ。これまでIntel製CPUを内蔵していた筐体に、AMDのRyzen 7 5800Uを搭載したモデルとなる。
最大の特徴はAMDのZen 3アーキテクチャを採用するRyzen 7 5800Uを搭載する点。AMD製APU搭載の8.4型「ONEXPLAYER Ryzen版」ではRyzen 7 5700UまたはRyzen 7 4800Uを搭載しているが、どちらも1世代前のZen 2アーキテクチャを採用だった。これらモデルよりも小型の本モデルの方がより高性能のAPUを搭載するのは興味深い。内蔵GPUは8コア、2GHz動作のRadeon Vegaである点は従来と同様だ。
筐体サイズはIntel版のminiと同等で、262×107×23~35㎜(幅×奥行き×高さ)。重量は619gで20gほど増量している。内蔵メモリは16GB。ディスプレイについては従来同様の7型/1,920×1,200ドットのタッチパネルディスプレイを搭載するモデルに加えて、新たな選択肢として7型/1,280×800ドットのHD液晶を搭載したモデルも用意している。ストレージは512GB、1TB、2TBの3モデルを用意しており、購入時にはストレージとディスプレイ解像度の違いで計6種類から選択可能になっている。
HD解像度のディスプレイについては他社のゲーミングUMPCではその多くが採用している。理由は低解像度の方がより高パフォーマンスを発揮でき、デフォルトの設定から調整することなくスムーズにゲームをプレイできるからだ。
これまで高解像度ディスプレイのモデルのみ用意してきた同社が、ここにきてラインアップを拡充し、前述のようなユーザーでも手軽にゲームをプレイできるように選択肢を増やした点については評価したい。
本体操作はタッチパネルと内蔵するソフトウェアキーボードを使い、物理キーボードは搭載していない。本体両端にはXInput準拠のコントローラを搭載。左側にはアナログスティックと十字キー、デスクトップ表示可能なHOMEボタンを備え、右側にはアナログスティックとA/B/X/Yボタン、キーボード呼び出しボタンやファンの回転スピードを低速化するナイトモードボタンを備える。
本体天面にはL1/R1相当のショルダーボタン、L2/R2相当のリニアトリガーボタンを搭載。3軸のジャイロセンサーを内蔵し、対応ドライバで利用可能。
端子類は天面部にUSB 3.0、給電対応のUSB 3.2 Type-C、3.5㎜イヤフォンジャック、底面部にも給電対応のUSB 3.2 Type-Cを1系統備える。シリーズ共通の魅力でもある、天面と底面の両方に給電可能なUSB Type-C端子を備える点は健在だ。
価格は14万9,600円~19万7,230円で、ディスプレイ解像度による価格差は最上位モデルを除くといずれも5,500円前後のため、幅広い活用を検討しているなら高解像度ディスプレイをチョイスする方がおトク感は高い。
CPU性能は高いがGPU性能はIntel版の方が有利
それではベンチマークを行なっていこう。ベンチマークは恒例通りの「PCMark 10」、「3DMark」、「ファイナルファンタジーXIV 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」、「CINEBENCH R23」を実施した。
今回は比較対象として同じくRyzen 7 5800Uを搭載する「AYANEO NEXT」、ZEN2アーキテクチャのRyzen 7 4800U搭載の「GPD WIN Max 2021」、そして同じ筐体ながらIntel Core i7-1195G7を搭載する「ONEXPLAYER mini」の「Power Limit」最大設定の3製品のデータと比較してみた。
こうして並べてみるとIntel Irix Xeの性能の高さとZen 3アーキテクチャのRyzen 7 5800UのCPU性能の高さが浮き彫りになる。GPUを使うテストではいずれも「ONEXPLAYER mini」のスコアが高く、一方でCPU中心のテストはRyzen 7 5800U/4800U搭載製品が上回るケースが多く見られる。
CINEBENCH R23のスコアで見ると、マルチコアのテストではRyzen 7がいずれもかなりの差を付けている一方でシングルコアのテストではインテルがもっとも高いスコアを取っており、Ryzenのマルチコア性能の高さが実感できる。
「ディアブロ イモータル」も快適にコントローラープレイ可能
なお、実際のゲームプレイにおいては、Intel版との違いはほとんど感じられず、2D系タイトルの「Vampire Survivers」のプレイ感はどちらも同じように感じられた。ほかにも最近発売になったTeam Ladybugの2D横スクロールシューティング「DRAINUS」も試したが気になる点はなく、快適に遊ぶことができた。
また、モバイル向けに開発され、PCでもプレイが可能なMMOアクションRPG「ディアブロ イモータル」についても試したが、こちらは移動や攻撃などの操作をコントローラーで行ない、メニューを開く場合などはタッチパネルが使えるといった形でハイブリッドな操作が行なえるので、場面によってはタッチパネルを搭載しないゲーミングPCよりも快適にプレイできる。
本作は元々がモバイル向けのため、一部操作ではタッチパネル、またはアナログスティックによるカーソル操作が必要になる場面もあり、コントローラの最適化が完全ではない。そのため、タッチパネルが併用できる「ONEXPLAYER mini」などと非常に相性がいい。ゲーム自体も見下ろし視点の2.5次元ビジュアルのため、GPU負荷があまり高くなく、かなり快適にプレイできる。
何より今回の「ディアブロ イモータル」は毎日コツコツとプレイするMMOアクションRPGとなっているため、より手軽にプレイできる環境構築も重要だ。スマートフォンやタブレットでのプレイでも楽しいが、キャラクター操作にコントローラーを使いたい人で、手軽に持ち歩いてプレイしたい人には「ONEXPLAYER mini」をおススメしたい。
近年のゲーミングUMPCのトレンドの1つと言えるのが、AMD製SoCの搭載だろう。国内未発売ながら最注目の「STEAM Deck」を始め、AMD製APU搭載モデル専業とも言えるAYANEOの登場など、その存在感はかなり高い。こうしたトレンドに対して8.4型の「ONEXPLAYER Ryzen版」や、今回紹介した「ONEXPLAYER mini Ryzen版」でいち早く追随してくるあたり、同社のフットワークの軽さが感じられる。
AMDは今後リリース予定のモバイル版「Ryzen 6000」シリーズからはついに内蔵GPUの強化を予告している。よりGPUの強化されたRadeon 600Mの登場の未来に備えて、同社がRyzen搭載モデルをこの段階から投入してきたことを考えると、今後の展開にも期待がもてる。
「ONEXPLAYER mini Ryzen版」はそんなゲーミングUMPC過渡期の1製品ながら、Zen 3アーキテクチャ採用のハイパフォーマンスなAPUを搭載した1モデルとして非常に魅力的な製品に仕上がっている。ほぼ同じAPUを採用する直近のライバル、「AYANEO NEXT」と比べても互角とも言える性能を発揮しており、コンパクトながら高性能なゲーミングUMPCを求める層におすすめしたい1台だ。
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