多様なステークホルダーと「ミンダナオ和平」
落合直之氏と高木佑輔氏の対談第2回は、フィリピンでの農業支援に地元研究機関を巻き込んだ事例について(写真はフィリピンの稲の畑、Marcus Lindstrom/iStock)
米中対立の激化に伴い、「西太平洋」地域をめぐる安全保障情勢が喧しくなってきている。
このような状況下で上梓された『西太平洋連合のすすめ:日本の「新しい地政学」』(北岡伸一編)では、「米中対立」時代に日本が生き残る道として、日本、東南アジア諸国、オーストラリア、ニュージーランド、太平洋島嶼国などによる「柔らかな民主主義の連合体」として「西太平洋連合」構想を提示している。
本稿では、現在もバンサモロ暫定自治政府首相アドバイザーとしてミンダナオ和平に深く関わっている落合直之氏と、同書でフィリピンと同構想について論じた高木佑輔氏が、国際協力の視点から語り合う全3回対談の第2回をお届けする(第1回はこちら)。
農業支援に地元研究機関を巻き込む
高木:落合さんの書かれた『フィリピン・ミンダナオ平和と開発』では、農業分野の開発協力にも触れていて、これはまさに能力開発のよい事例だと思います。
この事業では、JICA(国際協力機構)と事業の受益者という二者間ではなく、フィルライスというフィリピン政府の機関を巻き込む場を設定された点が目を引きます。フィルライスの正式名称は、フィリピン稲研究所で、フィリピン政府農業省傘下の研究機関ですね。このプロジェクトでは、ミンダナオ島北コタバト州にあるフィルライスの支所と協力したとのことですが、ここで働いてる人たちは、地元の人が多いんですか。
落合:地元出身の人が多いですね。本にも出てくるサイリラ・アブダッラーという所長は、地元出身でムスリムなんです。その彼が、「自分はムスリムとして、何とか彼らをサポートしたい。自分がサポートできるのは農業なので、フィルライスの中で培ってきた、この研究成果を何とか活かしたい」と言っていました。でも彼でさえ、MILF(モロ・イスラーム解放戦線)の実効支配地域に行くのは怖いって言ったんですよね。そこで、「じゃあ一緒に組もうよ」ということになったのです。
高木:その事業は陸稲を普及させる技術支援ですが、これは今、どうなってるんですか。
からの記事と詳細 ( 開発協力の本領発揮に必要な「巻き込む」農業支援 - 東洋経済オンライン )
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