リモートワークを長期にわたり実施した後、会社が社員をオフィスに呼び戻そうとしている。
行くべきだろうか。
たとえ雇用主が提示した新型コロナウイルスの安全対策案に満足していたとしても、そう簡単な話ではない。少なくとも表向きは労働者に選択権を与える企業もあれば、圧力を強めたり、最後通告をしたりする企業もあるだろう。どの程度の抵抗をするのか。本当に知りたいことを知るには、会社からの通知をどう読み解いたらいいのか。つまり問題は、在宅勤務を続けると自分のキャリアはダメになってしまうのか、ということだ。
決断に悩む私たちにとって、良かれあしかれ、今はめったにない機会となっている。
「『リモートで働くことを許可してください』と会社にかけ合うのに、これ以上のタイミングはない」。米人材コンサルティング会社リベット・グループの創業者、エド・ボウルシング氏はこう話す。
オフィスに戻って仕事をするのが嫌になった人たちが、在宅勤務の仕事を求めてボウルシング氏のもとにやって来る。あるクライアントは、コロナ禍でオハイオ州に引っ越した。生活費が安く、家族の近くにいられる新しい生活を手放したくないという。
ボウルシング氏は、キャリアの浅い社員には慎重に行動することを勧める。オフィスでは、さまざまなことを少しずつ吸収でき、自分の仕事ぶりをアピールしたり、時には上層部のミーティングに引っ張り出されたりもする。
自分がどれだけの交渉材料を持っているかを考えてみるといい。自身のスキルがどれほど希少で収益を生み出すものなのか。すぐに代わりを見つけることがどれほど難しいのか。自分がリモートワークを続けられるなら、給料が下がっても構わないか。本社を離れては出世できないため、自分のキャリアが今後、多少停滞するとしたらどう思うか。
米保険大手プルデンシャルが3月にリモートワーカー1046人を対象に実施した調査では、約43%が、他の人はオフィスに復帰し自分は自宅にとどまる選択をした場合に雇用の安定に不安を感じると回答した。だが、このデータは、私たちの多くがオフィスに戻りたくないと思っていることを示している――少なくとも毎日は。同調査に参加した9割近くが、コロナ禍が収束したら、少なくとも週に1回は自宅で仕事をしたいと答え、3人に1人がフルタイムで現場にいることを強制するような会社では働きたくないと答えている。
通勤のない在宅勤務は「正解」なのだろうか。職場と自宅の間を物理的に移動することは、境界線を設ける一助になるとハーバード・ビジネス・スクールのアシュリー・ウィランズ教授は指摘する。コロナ下で、多くの人は通勤時間がなくなって得た時間を仕事に充てた。
「人々は常に机に縛り付けられている必要があると感じている」とウィランズ氏は指摘。リモートワークの経験を評価してみてほしい。ワークライフバランスを維持し、燃え尽きを回避できているか。それとも、この1年間、四六時中パソコンにログインしてストレスをため、ひどい思いをしてきたか。
コネティカット州イーストンでグラフィックデザイナー兼アニメーターをしているゲイタン・ディシモンさんは、どのようにリモートワークに適応し、余分な時間を使っているかを日記に記録した。朝は幼い娘と一緒にいられるボーナスタイムがあり、夜中の2時にインスピレーションが湧けば新しくガレージに設置したスタジオに飛び出し、翌日に集中できないときは自転車で出掛けることができた。会社は、マンハッタンのオフィスに出社するかどうかをディシモンさんに任せていた。それでも、「ある日突然、会社の方針が変わったらどうしようという不安がつきまとう」
ディシモンさんは上司に、リモートワークを続けることで将来、仕事上のチャンスに影響するかどうか尋ねた。上司が「ノー」と答えたことで、ディシモンさんは決断した。
自分がリモートワークにどのように適応したかは、パズルの1ピースにすぎない。周りの人たちはリモートワークにどう適応したのだろうか。
「上司は5秒ごとに電話をかけてくるような、神経質な人だっただろうか」。フィラデルフィアで管理職の指導を行うジョイル・クロフォード氏はこう問いかける。その場合は、オフィスに顔を出すことで信頼を高め、実際に自分の権限を増やすことができるかもしれない。
もしマネジャーなら、部下を集めて会議を行うのにビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を使ったほうが楽なのか、それとも会議室のほうがいいのかを考えてみよう。アラスカ州ガードウッドで総務ディレクターとして働くイーサン・タイラーさんはこの1カ月、リモートチームの中でいくつかのタスクが滞っていることに気づき始めた。
「このようなズレを感じている」とタイラーさんは言う。
最近、地元のレストランで会ったときには、プロジェクトの概要と仕事の分担を迅速に行うことができた。会話にもぎこちなさが減った。
タイラーさんは、会社が6月から全員を少なくとも週3日はオフィスに復帰させる意向だと聞いて喜んだ。車に乗って、1時間かけてアンカレジのオフィスに行くのが待ち遠しいとタイラーさんは話した。
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