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Friday, May 7, 2021

「人種には“正当性”が必要なのか」──ククア・ウィリアムズが訴える、世界とファッション業界の人種差別。【戦うモデルたち】 - VOGUE JAPAN

セリーヌ(CELINE)アーデム(ERDEM)ジル・サンダー(JIL SANDER)等々、数多くのメゾンから愛される24歳のモデル、ククア・ウィリアムズ。イギリスのハダースフィールドでブラック・ブリティッシュカルチャーの中で育った彼女が、今年3月にインスタグラムに投稿した内容が大きな話題となった。そこには、憔悴した様子の自身の写真とともに、人種差別に対する強い憤りが綴られていた。

「この写真は空港の入国者収容所で撮影したもの。これは、誰にでも起こることではありません。黒人モデルがファッション業界で直面している人種差別問題に光を当てるために、私の身に起きたことをシェアします」

まかり通る主観的なルール。

2020-21年秋冬ミラノコレクションへの出演が決まっていたククアは、イギリスからイタリアへ向かった。しかし、ミラノの空港に着いた矢先、彼女は24時間空港内の入国者収容所で足止めされた。入国管理局いわく、「感染対策としてイギリスから入国は例外なく禁じている」というのがその理由だった。しかし、それは事実に反する言い訳だった。何より衝撃的なのは、これが“黒人モデルあるある”だということだ。彼女は「MIXED」と題し、この一件についての手記を公開している。

「コロナ禍で厳格な入国制限が敷かれる中での出張だったので、私は必要な書類をすべて揃え、準備は万端でした。でも一つ想定外だったのは、『肌の色』を理由に入国拒否をされる可能性があるということ。ここ数日間、私と全く同じルートで私と全く同じ書類を携えた黒人じゃないモデルたちは、皆、入国できていたのに。『それが規則ですから』と言うけれど、主観が入った時点でもはやルールではありません」

入国審査官に理由を聞いても、返ってくるのは「イタリア人以外は入国できない」という言葉。モデル事務所が用意した書類に審査官は目を通すことも無く、「ファッションショーに出演することは入国理由にならない」の一点張り。電話をかけることも禁止され、パスポートは没収された。そして翌日の夜、ククアを迎えに来たのは一台のパトカーだった。あたかも犯罪者を護送するかのように、彼女はイギリス行きの飛行機に乗せられ、強制送還された。紛れもない人種差別だった。US版『VOGUE』に寄稿したククアは、当時をこう振り返る。

「この経験はトラウマになりました。けれど、私のプライドは消えていません。私たちの身に起きていることを知れば、社会には改善されるべきことが数多くあるとわかるでしょう。でも、そのソリューションを見つける役割をも私たち自身が負わなければならないのでしょうか。私は収容されている間、なぜこうしたことが起きたのか何度も尋ねました。でも、その理由が“人種”であると、対話さえも拒否されるのだと感じました」

無自覚に差別の一端を担うファッション界。

2020年2月、NYで行われたコーチ(COACH)のショーにて。Photo: Pietro D'Aprano / Peter White / WireImage / Getty Images

幼いころからモデルになることを夢見ていたと話す彼女だが、念願のデビューを飾って間もないころに、ファッション界に根付く人種差別に直面した。黒人じゃないモデルと一緒に仕事をした際、撮影クルーは彼女以外のモデルは名前で呼ぶのに、ククアのことは「the Black girl(黒人の女の子)」と呼び続けた。その時彼女は、「私はこの撮影において、ダイバーシティの表明要員としてしか見られていないのではないか」と感じたと振り返る。

「黒人モデルだけが何度も遭遇する差別があります。白人とは異なる髪質をちゃんと扱ってもらえなかったり、キャスティングに向かう途中で警察の職務質問を受けたり、何度訂正しても自分の名前を正しく呼んでもらえなかった経験は数知れません。今回のミラノの空港での一件で、私の我慢も限界に達しました」

ファッション業界は、少なくともカメラの前ではダイバーシティやインクルージョンが進みつつあるように見える。しかし、その背後ではいまだにククアが指摘する通り差別が横行している。Black Lives Matter運動やStop Asian Hate運動が世界中に広がっている事実からもわかる通り、人種差別がそこここで起きているのだ。ククアは、 ファッション業界はその事実に向き合わなければならないと訴える。

「人種差別をめぐる問題には、もっと透明性が必要です。だから私たちは声を上げるのです。でも、そうすると『また人種差別問題を提起をするモデルが出てきた。もう疲れたよ』という声を聞こえてくるのです。誰も目立ちたくてやっているわけじゃない。しかし仕事をしていると、差別は日常茶飯事。なのに実社会には、自分の身を守るすべが何もないのです。

私は自分の人種を愛しています。なぜ私たちばかりが、いつも自分の人種の正当性を説明しなければいけないのでしょうか。人種差別や憎悪を終わらせるためには、肌の色を超えた世界的な連帯が必要です。今が戦うときです。有色人種ではない人も」

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