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Thursday, May 20, 2021

介護保険料倍増 早急な制度見直し必要だ | 熊本日日新聞社 - 熊本日日新聞

 65歳以上の高齢者が支払う介護保険料の全国平均額が、4月の改定によって月額6014円(熊本県は6240円)となり、2000年度の制度開始以来初めて6千円を超えた。開始時の2911円から2倍を超える負担増である。

 厚生労働省は、団塊世代が全員75歳以上となる25年度には6856円になると推計する。保険料は「月5千円が限界」との指摘もある中、老後の主な収入源である公的年金も目減りしている。これ以上の負担増には対応できない高齢者が増えそうだ。

 介護保険の財源は国や地方の公費に加え、40歳以上が支払う保険料と利用者の自己負担で賄っている。このまま負担増が続けば、制度の維持は困難になり、介護・支援が必要な高齢者の暮らしを脅かしかねない。保険料の支払い開始年齢の引き下げなど、早急な制度の見直しが必要だ。

 保険料引き上げの背景には、介護サービス利用者の急激な増加がある。同省によると、21年度に65歳以上で介護や支援が必要な人は約680万人。制度が始まった約20年前に比べて400万人以上増えた。高齢化がほぼピークとなる40年度には約872万人となり、必要なサービスもさらに増す。

 介護費用も増えている。19年度は前年度比3559億円増の約10兆5095億円となり過去最多を更新した。01年度の2・4倍だ。25年度は約15兆3千億円と見込まれており、財務省からは「このままでは制度が崩壊しかねない」との声も上がる。

 国は介護保険制度の改正を3年に1度行っている。19年に厚労相の諮問機関の社会保障審議会が提示した見直し案では、原則1割の利用者負担を2割とするほか、介護を受けるためのケアプランの作成費用も利用者が一部負担するよう求めていた。

 ただ、社会保障制度改革案に75歳以上の一部を対象とする医療費負担の2割引き上げを盛り込んだことから、高齢者負担の「二重増」を回避するため介護保険制度の見直しの一部は見送られた。

 このため、次の制度見直しでは高齢者の「痛み」は避けられないとの見方が大勢だ。しかし、介護保険料を滞納して資産を差し押さえられた高齢者は18年度に全国で2万人近くに上り、過去最多を更新した。新たな「痛み」が加われば高齢者の生活をさらに圧迫することは必至で、介護サービスの利用を控える人が増えることも予想される。高齢者の負担増は慎重に検討しなければならない。

 21年度政府予算は、社会保障費や防衛費の増加で過去最大となった。国の借金に当たる新規国債発行額も、新型コロナウイルスの影響による税収の低迷から11年ぶりに増え、財政悪化は一段と深刻化した。

 介護保険制度の理念は要介護の高齢者らを「社会全体で支える」ことだ。これを将来にわたって守るためにも、制度の在り方と財源確保、予算の使途について今こそ議論を深めなければならない。

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