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Thursday, January 14, 2021

さいたま市でも「けっこう見える」憧れの天体観測を手軽に「eVscope」 - Impress Watch

筆者は星を見るのは好きですが、天体望遠鏡などは持っていません。一眼レフと三脚を使い、長時間露光によって天の川の撮影をしたことがある程度です。

最近は久しく夜空の撮影には行っていませんが、5~6年前には天体望遠鏡が欲しいと思ったこともありました。しかし結局買いませんでした。なぜなら、使うためのハードルが高い、と思ったからです。筆者の友人には天体観測を趣味としている人いて、その苦労を間近で見た結果、「これは止めておこう」という結論に至りました。

友人が素人のころから天体望遠鏡のセットアップの様子を見ていましたが、これがとにかく難しいのです。星を実際に見るまでにものすごく時間がかかります。慣れている人ならそうでもないのでしょうが、筆者の友人はまずその準備に1~2時間は掛かっていました。筆者はそれを傍目にレジャーシートを引いて寝転びながら双眼鏡で星を見つつ一眼レフで適当に長時間露光撮影をするというイージーモード。セットアップが終わったら望遠鏡も覗かせて貰うので、若干後ろめたい思いをしながらカップラーメンを啜っていました。

今回レビューするUNISTELLARの「eVscope」は、天体観測を行なうために必要なさまざまな手順を自動化することで、天体の知識が無くてもスマホ一つで簡単に操作でき、天体観測が出来る望遠鏡です。画像補正機能も備え、市街地の光で空が明るいところでも天体観測ができるのが特徴です。

eVscope

赤道儀の設定が難しい

では、通常の望遠鏡は、何が難しいのでしょうか。

星を追尾する天体望遠鏡は、大まかに言って天体望遠鏡本体と赤道儀と呼ばれるユニットで構成されています。三脚も必要です。赤道儀は、動き続ける夜空の星を追尾してくれる機材です。これに天体望遠鏡をセットすることで特定の星座や星雲などを観測できるようになります。また、天体望遠鏡が無くても、赤道儀に望遠レンズ+一眼レフなどのデジカメを付ければ星の写真を撮ることができます。

赤道儀を正しく動作させるには「極軸合わせ」や「アライメント」と呼ばれる設定が必要で、これが初心者にはくせ者です。「北極星」の位置を把握してセットするなど諸々手順が必要なのですが、まずこれに時間がかかります。

北極星は意外と小さいというか、少なくとも筆者の素人目では、すぐにその位置はわかりません。それを正確に捉え、基準とする細かな作業の繰り返し……とても大変そう、に見えました。

肉眼で観測するだけなら大雑把なセッティングでも問題が無いのですが、長時間露光によって星を追尾しながら撮影したい場合にはより厳密な設定が必要になります。詳しい人がそばで教えてくれればできるのでしょうが、残念ながら友人のそばにいるのはカップラーメンを啜っている筆者だけなのが不幸でした。

余談ですが、赤道儀の中には、「自動導入」という機能があるモデルもあります。筆者が少し天体観測に興味を持っていた5~6年前に「自動導入」という言葉を勘違いしていたことがありました。自動で導入してくれるのだから、天体望遠鏡を置けば自動で星を探してくれるのだと思っていたのです。何やらタブレットのようなデバイスも付属していますし、最近の技術なら、星の画像から自動的に位置を特定してくれるぐらいできるのだろう、と。

しかし実際にはそんな甘い話はなく、まず「アライメント」などを手動でやることが必要で、それには天体の知識が最低限必要である、ということでした。設定が終わったうえで、星座を選べば「自動で位置を合わせてくれる」ということだったのです。

ただ、最近の製品では本当に全自動でセットアップを行なってくれる製品も出始め、基準となる星も北極星以外の、明るい星なら何でも良い、というものや、スイッチ一つで完全自動でセットアップしてくれるものも市販されています。技術は確実に進歩していました。

天体観測のための「時間」を稼ぐ

天体観測は、楽しむための条件も非常に厳しいです。準備に数時間もかかっていると観測できなくなってしまうこともあります。特に夏場だと午前3時には若干空が明るくなることもあるので、「仕事が終わってから山へ」みたいなことをしていると意外と時間がありません。

天体観測は基本的に「晴れていること」「月が出ていないこと」「街の光がなるべく少ないこと」など最低でもクリアしないとならない条件が多いのです。月がいつ出るか、街の光がなるべく少ない暗い場所を探す、というのは人間側で調整ができますが、天候に関しては本当にやっかいです。特に着いたときには晴れていたのに準備していたら曇ってきた、などというのはよくあります。その逆もあるところが面白いところではありますが。

結論として、天体観測をするなら素速く機材を展開して素速く観測するのがベストである、ということです。

今回レビューするUNISTELLARの「eVscope」は、その「ベスト」を実現する先端技術の結晶とも言える望遠鏡です。

とにかく使い方が簡単。これにつきます。天体の知識が無くても説明書を読みながら30分はかからずに観測を始められます。何しろ、初心者殺しの「手動による初期設定」がほぼいらないのです。なので使い方さえ分かれば、スマホのボタン一つで準備が整い、星を見ることができます。

独自の画像処理技術も備え、市街地からでも観測しやすいのも特徴になっています。筆者も今回、さいたま市の自宅から観測してみました。とにかく手間がかからないので「今日は晴れているな」と思ったらすぐに設置して見られます。

デジカメと天体望遠鏡が融合

eVscopeは簡単に言うと、デジカメ内蔵の天体望遠鏡と赤道儀がセットになったものです。仕組みとしては「反射望遠鏡」に似ています。反射望遠鏡は底部の鏡で光を望遠鏡の先端の十字部分にある「対物鏡」に集めてそれを接眼レンズで観測するという仕組みですが、eVscopeでは対物鏡が画像センサーになっていて、その映像を接眼レンズの有機ELディスプレイか、スマホアプリで見ることができるようになっています。

ソニーセンサーで星を増感して観測する「eVscope」。都市でも天体観測

十字部分の裏側に画像センサーが搭載されています

その特長は、「AFD(自動フィールド検出機能)」と、「エンハンストビジョンテクノロジー」による画像補正です。画像センサーにはソニー製の高感度センサー「IMX224」を搭載しています。

「AFD」は、「初心者殺し」殺しとも言える機能で、センサーが捉えた星の映像から位置を正確に認識し、望遠鏡を自動的に最適な方向へセットしてくれるUNISTELLARの特許技術になります。筆者が昔間違っていた意味での「自動導入」をまさに実現してくれた機能なのです。

「エンハンストビジョンテクノロジー」は、画像センサーによりリアルタイムで星の光を増幅し、市街地などでも天体観測をしやすくする機能になります。本来肉眼では捉えられない星の姿を見ることができます。

AFDで簡単セットアップ

操作は全てスマホにインストールしたアプリから行ないます。eVscopeの電源を投入するとスマホにWi-Fi端末「eVscope-〇〇〇〇」(〇の部分は個体によって異なります)として認識されるので、それをiPhoneやAndroidのスマホで選択すればペアリングは完了。アプリを起動すればすぐにeVscopeと接続されます。

電源スイッチを入れると光ります
こんな感じで表示されます

初期状態ではeVscopeが真上を向いていますがこの状態ではAFDが正常に動かないので、まずはアプリのコントローラーによって45度くらい傾けた状態にします。そして本体後部にあるピント調整用のダイヤルを規定位置に合わせます。ダイヤルには矢印が刻印してあるのでそれを本体の上側にあるネジの位置に合わせればOKです。

eVscope底面にあるダイヤル。写真ではずれていますがダイヤルの矢印を上側のネジの位置に合わせます

これは「おおよそのピントを合わせる」作業で、AFDを動作させるために最低限ピントを合わせるようにするものです。正確なピント調整は後でやります。

その状態でAFDをオンにすると、自動的に星の位置を認識して設定が完了。わりとあっさり完了します。基準となる明るい星を望遠鏡の視野に手動で入れる、などの操作はほぼ要りません。スマホのボタンを押せば勝手に星を探して設定してくれるのです。早いときは数秒くらいで位置を特定できます。全く星が写らない状況だと失敗するようですが、筆者が試した範囲では多少時間がかかることがあっても大抵成功していました。極端に明るい星では無くても、ある程度星が写っていれば動作する印象です。

AFDをオンにしたところ。少しずつ望遠鏡を動かしながら星を探して位置を特定します

筆者の自宅はさいたま市で、街の光もそれなりにあって肉眼では明るい星しか見えないのですが、そんな状態でも難なくセッティングは終了しました。初めて使ったときは「え? 本当にこれで終わり?」と思ったほどです。

筆者宅のベランダからの風景

セッティングは終わりましたが、この後はピントの微調整をします。まず、アプリから適当な「恒星」を選ぶと自動的に望遠鏡が恒星をとらえます。その後、先ほど取り外した「バーティノフマスク」を天体望遠鏡に取り付けます。

バーティノフマスクは一般的な天体望遠鏡でも使われるもので、天体望遠鏡でのピント合わせを楽にしてくれるアイテムです。この特殊なスリットを通して星を見ることで星を中心として輝く「トゲ」が生えているような独特な形に写ります。これを「左右対称」な輝き方に見えるように調整するとピント合わせは完了です。具体的には下記の写真のようになります。

この状態ならピントが合っています

ピントが合っていないと左右に偏って見えるので、カメラのピントのように「対象がぼけているかどうか」で判断するのではなく、形状から視覚的に判断できるのです。本来「点」にしか見えない星にピントを合わせるよりも簡単にピントを合わせることができます。

こんな状態になっているとピントは合っていません

ピント合わせは先ほどおおよそのピント合わせに使ったeVscope本体底部にあるダイヤルを左右に回して行ないます。ピントがあったらバーティノフマスクは外します。

高価だがその価値はある

eVscopeは、筆者のように天体望遠鏡や赤道儀を使ったことが無い人間でもすぐに使い始めることができました。これだけでも筆者としては満点をあげたい望遠鏡です。

ただし、価格のほうは379,800円と少々値ははります。それでも自動で星を探してくれ、デジタル処理によって市街地でも綺麗な星が見ることができ、初心者でもスマホで簡単に操作できる、という価値は計り知れません。単純に高いとは言い切れないのではないかと思います。

基本的に「本体+三脚」という単純な構成なので天体望遠鏡というより一眼レフの大型望遠レンズに近い使い勝手です。専用のリュックもオプションで用意されています。

これだけ簡単に使えると、クルマにいつも搭載しておき、チャンスがあったらすぐに取り出して観測する、という気軽な使い方が可能になります。筆者は、ここ数年冷めていた天体観測のモチベーションがまた上がってしまいました。

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