奈良先端科学技術大学院大(奈良県生駒市)ソーシャル・コンピューティング研究室の荒牧英治教授(医療情報学)らの研究グループが、乳がん患者が投稿した体験をインターネットで公開する「ABCエピソードバンク」を患者らでつくる企業と共同開発した。患者は匿名で投稿が可能で、バンクのサイト上で読者と交流できる。バンク側は、人工知能(AI)の技術を使い、読者が求める内容に近い投稿を表示する。荒牧教授は「研究機関と患者グループが開発・運営する、世界でも珍しい取り組みではないか。患者や医療関係者などに活用してほしい」と話している。【久木田照子】
主な対象は進行乳がん(Advanced Breast Cancer)の患者。この頭文字ABCをバンクの名称に採用した。同グループは、患者が体験を文章で語ることは、自身を客観視し、心が落ち着く状態につながるとみている。
読者には、患者やその家族・友人、医療従事者らを想定する。荒牧教授らによると、読者は投稿を通して、患者の心身の状態に触れていく。また、投稿に添えられたキーワード(「抗がん剤」「こころ」など)をクリックすると、同じキーワードを含む別の投稿が表示される。キーワードを選択することで読者のニーズが反映されるため、「苦しい時は、つらい内容の体験を読みたくない」などと感じる人も利用しやすいように努めた。
交流機能も工夫した。読者は投稿に対してコメントができないが、「(そういうことって)あるある」「(伝えてくれて)ありがとう」などの反応は送ることができる。体験を聞く姿勢に徹し、そっと寄り添う形になるという。「ふんわりと伴走する」ような仕組みだ。同社の担当者は「投稿者と読者の双方に負担を感じさせず、一方通行ではない交流ができる」と長所を挙げる。
開発のきっかけは、奈良先端大が東京大と共同開発した、発達障害などの当事者研究エピソードバンク。乳がん患者ら13人でつくる会社「キャンサー・ソリューションズ」(東京都)がその存在を知り、「一人ずつ異なる体験や気持ちが集められ、他の人と共有できる場」ととらえ、2020年春、乳がん患者版のバンクの開発を奈良先端大に打診した。同社は「患者の声を拾い、研究に取り入れてもらえる。『一緒にやりましょう』という、大学のスタンスがありがたかった」と振り返る。
奈良先端大と同社は毎月1回、オンラインで会議を開催。患者が求める形を同大に伝え、バンクの形に反映させていった。治療への不安や生活での困りごと、仕事の続け方、周囲の人との関係……。なかなか本音を表現できない、患者の生の声を医療従事者や家族、友人ら「支える人」に理解してもらえるようにと、意見交換を重ねたという。
バンク開発に参加したのは同大と同社の十数人。荒牧教授は「研究者は普段、患者と接する機会が少ないので、学ぶことが多かった。バンクに寄せられる貴重な情報が、医療現場の教育や、患者の支援に生かされるはず」と話す。ABCエピソードバンクのサイトはhttps://ift.tt/394Fgkj
からの記事と詳細 ( 乳がん体験をネットで共有 AIで必要な情報表示も 奈良先端大が共同開発 - 毎日新聞 - 毎日新聞 )
https://ift.tt/3pRzQjw

No comments:
Post a Comment