Pages

Saturday, July 25, 2020

新・心のサプリ:必要な時期の学び=海原純子 - 毎日新聞

 質の高い研究をして論文をたくさん書いている科学者がいて、若いころ1日10時間は勉強していたという話を聞いた。また別の機会に素晴らしい演奏をするミュージシャンが、若いころ1日5時間は練習していたという話を聞いたことがある。すごいなあ、とその時そう思ったのだが、一方それだけの時間を1日のなかで「勉強する」「練習する」ということに使えるというのは幸せなことだなあ、とも感じるのだ。

 豪雨で家が浸水して、制服が流されてしまい、避難した時の服を着たまま登校した中学生の姿がニュースで報道されていた。毎日、泥を家から撤去する作業で大変、ということだったが、中学3年生の夏にそうした時間を過ごすのはつらいだろうと心が痛んだ。

 新型コロナ感染拡大の影響で親の収入がなくなったり減少したりした子どもたちも多い。一人親家族で食事すらままならなくなった子どもの話も報道されている。

 勉強したくとも、経済的に、あるいは災害などの環境の影響で、できなくなった子どもたちはどのくらいいるのだろう。思考力も身体の能力もどんどん成長しているその時期に必要な学びができない、ということの後遺症のようなものが気になってならない。

 今、子どもたちに対して、あるいは若者たちに対して、経済的支援については問題点として議論されてはいるが、心に受ける影響については、ほとんど考えられていない。私が気にしているのはそうした点である。現在はまだ大きな問題になっていない。経済的なことをやりくりし、環境のなかで生きていくことに目が向けられている。ただ、時間が経過した時、必要とする時期に、必要な学びが物理的、経済的にできなかった子どもや若者と、いい環境の中で、必要な学びの時間を過ごした子どもや若者の間に生じる格差だ。自分が努力しなかったのではなく、さまざまな環境要因で、勉強する時間がなく、努力したくても勉強することができなかった子どもや若者の心が心配だ。

 自分が高校3年の夏は、受験のために1日12時間勉強するタイムスケジュールを作っていたのを覚えている。当時は親も比較的元気で災害もなく、そんなふうに時間を自分の勉強のために使うことができた。しかし、大学に入学した後、父が結核を再発したので、経済的に厳しい状況に追い込まれて、アルバイトをしながら大学に通ったので、もう少ししておきたい、プラスアルファの勉強、例えば語学などに使える時間がなかった。当時できなかったそうした勉強不足がその後の自分に影響し、無念さがこみあげることがある。

 今、困難な生活を生きている子どもたちや若者たちが必要な学びの場を得られるようにしてほしい。オンライン、スマートフォンでもアクセスできるような学びの場などを提供し、未来の若者の心を守ってほしいと思うのだ。(心療内科医)

Let's block ads! (Why?)



"必要な" - Google ニュース
July 26, 2020 at 12:10AM
https://ift.tt/2BuzA6i

新・心のサプリ:必要な時期の学び=海原純子 - 毎日新聞
"必要な" - Google ニュース
https://ift.tt/2ONk2OH
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update

No comments:

Post a Comment