日本旅行業協会(JATA)は先ごろ、2日間にわたって「新型コロナウイルスと日本の観光業」をテーマとした緊急WEBセミナーを開催した。1日目は、JATA 理事・事務局長の越智良典氏が「新型コロナウイルス感染危機を乗り越える」と題して、市場の現状分析と回復に向けた今後の取り組みについて説明したほか、風の旅行社社長の原優二氏が「新型コロナ禍を乗り切るための経営術」として、雇用調整助成金の活用法を紹介した。
越智氏は、2月28日のJATA会員への調査結果として、3月の予約は7割減で3000億円が消失すると説明。旅行消費額を試算すると、毎月1.5兆円が消える計算になるとして、現状を「前例のない危機」と位置づけた。
JATAは、この損失予測をベースとして、政府に対して(1)雇用調整助成金の拡大、(2)感染リスクを下げる対策を条件とした旅行やイベントの自粛要請の解除、(3)修学旅行の中止ではなく延期と取消料が生じる場合の財政支援、(4)大規模な需要回復キャンペーンの実施、(5)健康チェックなどの国際的な仕組みづくりの5項目を要望した。
雇用調整助成金の拡大については、申請要件の緩和や助成率の拡大が決まったが、越智氏は「特例措置の延長、1人1日当たり8330円の上限額の引き上げなどをお願いしたい」とさらなる支援を要望した。(※現在は特例措置としての上限引き上げが予定されている。)
修学旅行対策については、令和2年度補正予算で6億円が盛り込まれたほか、需要回復キャンペーンでは、経済産業省の予算として1兆6794億円で「Go Toキャンペーン事業」が実施されることを説明。過去の「ふっこう割」が30億円から80億円だったことから、「桁違いの対策」と評価した。
「Go Toキャンペーン事業」のうち「Go To Travel」では、1泊2万円を上限に旅行代金の半額が補填され、補填額のうち3割は地域での産品を購入するクーポンに充てられる。越智氏は「観光が牽引役となって、全国に幅広く旅行者を送り、地方経済を復活させるのが目的となる」としたうえで、「手配旅行、受注型、団体にも適用されるので幅広い旅行会社に活用して欲しい」と呼びかけた。
また、感染防止対策の行動計画で安心な旅の実現をめざすとして、それぞれの旅行のシーンや旅行者の動きに合わせた安全対策を感染症専門家の協力で6月頃をめどに策定し、旅行会社は安全対策を講じた機関や施設を選んだうえで、「3密対策」を組み込んだツアーを企画していくことが必要との考えを示した。
今後の旅行需要回復に向けたスケジュール感として、7月頃から国内旅行のキャンペーンを開始し、海外旅行と訪日旅行については、各国の旅行制限の緩和に合わせながら進め、来年に延期になった東京五輪から本格的に訴求を高めていく。越智氏は「海外と訪日はV字回復は難しいかもしれないが、順次できるところから進めていく」との考えを示した。
そのうえで、海外旅行の復活に向けて、JATAは当面はオンラインセミナーや情報発信を続け、感染状況、旅行制限の緩和、航空路線の復活などを見ながら、秋にかけてオンラインキャンペーン、メディアや旅行会社を対象としたFAMを実施する計画のほか、9月の東京商談会と10月の沖縄でのツーリズムEXPOジャパンを復活の機会として活用していく考えを示した。
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