SDGsのラベリングから、積極的な「SDGsストーリーTM」へ
なぜ、自分たちの企業・団体はSDGsに取り組むのか。17個のアイコンのラベリングに終始してしまっては伝わらない。“知ってもらう”ことは、“SDGsを推進する”と同じくらい重要なのだ。
伝えるために必要なことは何なのか?その実践を考えていきたい。
PRの基礎情報づくりとしての「言語化」
いろいろ苦労してSDGsの活動をされているのに、その情報を整理して世の中に公表できていない企業の方々があまりにも多いと感じている。実施までに多くのエネルギーを消費して、燃え尽きてしまうのだろうか。
一番大切なのはその苦労を知ってもらうことではないか。成功も失敗も含めてそのナレッジを世の中に共有することで、次の新たなSDGsの芽が生まれてくる。
そのためにも“実施すること”と、“それを知ってもらうこと”は少なくとも1:1のパワー比率であるべきだ。
まずは実施後に、自分たちの苦労や実績を話し合い、「自分たちの暗黙知を言語化する」ことが必要になる。自らの活動を言語化して、その情報を世の中に知ってもらうことで、初めて世の中に新しい価値が広がっていく。
伝えるべきSDGsの情報は
ニュースリリースやWebでの情報配信はナレッジ共有の第1歩となる。では、その情報=ニュースの発表はどのようなスタンスで行うべきか。
そもそも、SDGsの活動情報は新商品情報でもキャンペーン情報でもなく、日常の企業活動に属する。日々の活動なだけに、ニュースにしにくい。ニュースの基本である“今この時に報道する理由”が薄いのだ。従って、自らきっかけをつくることが重要になる。
きっかけとしてつくりやすいのは①数字が出た②イベントがある③第三者と提携した――などのタイミングだ。
数年間積み上げてきた実績は、特に丁寧に数値で把握しておく。事前と事後、または初年度からの意識と行動の変化をきちんと数字で確認し、数値情報としておきたい。そのためにもアンケート調査は重要になる。
リリースでは、とかくイベント実施回数の数字だけを使いがちだが、実際には実施回数以上に「そのSDGs事業に参加した人数」「参加したことによる意識の変化」の方が重要なので確認しておきたい。「Perception Change(認知の変化)」も重要な指標だ。
計測可能なアウトカム(成果)の議論の中で、事業の持続的効果を表す数値として、次の6つがよく用いられる。
- 活動に費やした延べ時間
- 影響を受けた人数
- 意識変容を起こした人数(率)=「Perception Change」
- 行動変容を起こした人数(率)=「Behavior Change」
- 新しく地域で創出された持続可能な雇用数
- 総予算
中には把握が難しい数値もあるが、イベント実施回数や参加人数といった「量」の報告に加えて、「質」の効果も確認してほしい。
また、SDGsウォッシュと見られないように、数年間実施している事業であればその説明も盛り込んでおくべきだ。実施していない構想レベルの話を大きくPRすることは避けた方がよい。
SDGsの情報はどの程度、記事になるのか
SDGsの新聞記事はどの程度あるのか。中央紙・地方紙・業界紙などの新聞記事は有料のWebサービスで検索することができる。2017年には約1200件、2018年には3600件、2019年には9000件と、この数年、年率約300%で増加している。
毎日どこかの新聞で20件以上のSDGsの記事が書かれており、同時にWebニュースでも、その記事が掲載される。これほどSDGsの情報がメディアから発信される時代に、“自社の活動に問い合わせすらない”のは、知られていないからにすぎない。自ら手を挙げないと気づかれない。
メディア側には日本全国から大量のニュースリリースが送られてきて、一つ一つを十分に確認できない状況にある。そのような情報の海の中、記者が書きやすい情報とはどのような情報なのか、しっかりイメージすることが必要だ。
「これを伝えることが、世の中を良くするきっかけになる」。その大義に従い記事を書いている記者に対して、リアルな現場の声を伝える、新しい事実を伝える、社会の大きな動きを伝える、世の中への新しい視座になる――など、ニュースリリースの情報は普遍的な社会価値を踏まえた内容にしたい。
「ソーシャルIN」の情報に
ニュースリリースは基本的に、マーケティングでいう「プロダクトOUT」の情報になりがちだ。
企業側が自分たちの言いたいこと、自分たちの主張に沿って紹介していく文章になる。そういう情報は、よほど画期的な製品などでない限り、記事や話題になることはない。
また、その「プロダクトOUT」の舞台が単一マーケットの場合、いわゆる中央紙ではなく、業界ニュースを扱う専門紙での記事に閉じてしまう恐れがある。読む側も、業界内の一情報と捉えてしまうかもしれない。
広く社会に知ってもらうには、「プロダクトOUT」より、社会ニーズに基づく「マーケットIN」の情報開発を意識すべきだし、さらには、社会の大義に根差す「ソーシャルIN」となるリリース情報を考えてほしい。もちろんそのためにはファクトが必要となる。
自社のSDGs情報が、自社が関係するマーケット(業界)、ひいてはソーシャル(社会)に影響を与えるには、骨太の「SDGsストーリーTM」に基づいていなければならない。
SDGsの実施は単発では終わらず、複数年のプロジェクトになる。プロジェクトをしっかりと支え、その活動から社会が理解しやすいストーリーをつくり、情報を世の中に見せていくことが必要だ。
世の中に知ってもらわないと、その苦労も汗も知られることはない。成功も失敗も知ってもらってこそ、世の中に新しい価値を示すことができるのだ。
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June 02, 2020 at 03:53PM
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