iPhoneがLightningコネクタを廃止し、Smart Connectorを採用するのではないか? この話は1年以上前から語られていた話で、一応の納得感もあります。現在、LightningコネクタはiPhoneに残された唯一のコネクタであり、底面から内側に向かって穴が開けられている状態です。 もちろん防水は施されていて水の侵入は防げると思いますが、こうした部分がない方がより防水性を高めることができるかもしれません。加えて、水に浸かる可能性がある端子の抜き差しは不具合の要因にもなりえます。これを排除できることは、製品にとってプラスと言えそうです。 Smart ConnectorがiPadのような形状のまま採用されるのであれば、本体側はボディの表面に端子が露出する形となります。場所はどこになるのでしょうか。 Lightningコネクタがあった場所にSmart Connectorを配置する場合、何かの上に置いて充電することになれば、マイクとスピーカーの開口部を塞いでしまいます。一方背面の場合、カバーしているガラスに穴を開けなければなりません。 側面も調整が必要です。現状、左側面にはミュートスイッチとボリュームボタン、右側面には電源ボタンが配置されていて、Smart Connectorを装着する場合、これらに干渉しないサイズにアクセサリをまとめる必要があります。 iPadのように、電源ボタンを再び上部の側面に移動させるなどのボタンの移動がなければ、側面の活用は難しかもしれません。これらは「こう変えます」といえばいいだけと言えば、それまでなのですが。 ●アクセサリビジネス アップルのビジネスは現在、ハードウェア部門とサービス部門が存在し、ハードウェアにはiPhone、Mac、iPadといった主力製品に加えて、Wearable, Home, and Accessoriesという部門があります。 このアクセサリにはケースやケーブル類、充電器なども含まれているわけですが、アップルはiPod以来、独自のポートを採用し続けてきたことで、このアクセサリビジネスを拡大させてきた経緯があります。 iPodには当初、30-pinドックコネクタが搭載され、これはそのままiPhoneにも採用、充電やデータ転送を行うためのコネクタとして利用されてきました。この独自ポートはサードパーティーにもライセンスされ、iPodやiPhoneを直接立てるスピーカーなども人気がありました。 しかしiPhone 5でドックコネクタを廃止し、より小型のLightningポートに変更され、現在に至ります。このコネクタの変更で何が起きたかというと、ユーザーが手元に持っていたあらゆるケーブルやアクセサリが利用できなくなったのです。 アップルは一応、Dock-Lightningの変換アダプタを用意しましたが、iPhoneにケースをつけていれば変換アダプタが干渉し、Lightningがきちんとささらないという不便さに見舞われます。 結局、サードパーティー製のケーブルが充実するまではアップルから純正のケーブルを2000円以上出して購入しなければならない事態が続きました。もちろん、これらはアップルにとって少なくない売上高への貢献となりました。 コネクタの変更は、確かにテクノロジーとしては進化かもしれませんが、手元にあり充実させてきたアクセサリが一気に死蔵しかねない事態であり、ユーザーとしてはより慎重は判断を求めたいところです。ぜひ慎重な判断を! ●欧州が進める統一規格 アップルは変化をバッサリと敢行する企業。それが長い目で見れば、ユーザーにとってメリットがあると判断すれば、躊躇なくやってしまいます。 しかしそうした企業の独自規格乱立に対して、一定の歯止めをかけようとしているのが欧州です。2020年2月、10年にわたって議論されてきたスマートフォンなどの機器の充電端子を統一する法案が賛成多数で可決されました。 現在、AndroidスマートフォンはmicroUSB、USB-Cが多く採用されており、アップルはLightningコネクタを採用しています。おそらく、より新しく汎用性の高いUSB-Cで統一しようという動きになっていくのではないかと考えられます。 アップルはこの法案に対して、e-wasteが一時的に増大すること、イノベーションを阻害することを理由に、反対する声明を出してきました。iPhoneのLightningコネクタの廃止は、本体から充電端子を取り去る形で、この法案に対応するという奥の手と言えるのかもしれません。 ●iPhoneとSmart Connectorで何をする? さて、iPhoneに採用されるSmart Connectorで何をするか?という話です。まず、アップル純正のアクセサリから見ていきましょう。 アップルがiPhoneのLightningコネクタに差し込んでやることは、 ・ 本体の充電 ・ バッテリーケースとの接続 ・ データ転送 ・ HDMI出力 ・ オーディオ入出力 ・ アクセサリとの接続 といったあたりで、Smart Connectorも何らかの、ドックのようなデバイスを使って、引き続きこれらを実現するのではないか、と考えられます。その付属するドックの出力がUSB-Cになっていれば、割と多くのことが解決しそうなのですが。 加えて、iPadのような使い方、すなわちキーボードのような入力装置もできるでしょうし、外部スクリーン拡張ができれば、折りたたみスクリーンのようなデバイスを実現することもできそうです。 という夢が広がるので、ぜひ側面にSmart Connectorを用意して欲しいところです。 筆者紹介――松村太郎 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。 公式ブログ TAROSITE.NET Twitterアカウント @taromatsumura 文● 松村太郎 編集● ASCII
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