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Monday, April 6, 2020

みずほ銀行 × シニフィアン 日本からメガベンチャーを生むために必要なこと - Forbes JAPAN

時価総額1,000億円を超えるユニコーン企業の創出の課題と方法について、みずほ銀行 執行役員 イノベーション企業支援部長の大櫃直人、シニフィアン共同代表の朝倉祐介に聞いた。
朝倉祐介(以下、朝倉):未上場、上場後も成長を続ける企業を含めたメガベンチャーを生むためには、「経営資源をいかに補っていくか」がポイントだと思います。ひとつはリスクマネーです。もうひとつは、「経営面における洞察」と我々は呼んでいますが、経営の知見です。最後は、信用力です。

スタートアップ企業への注目が高まったとはいえ、社会全体から見ると、信用補完していくことも重要になります。そういった経営資源を補填するような仕組みをつくりたいと、私たちは、みずほフィナンシャルグループとともに、上場前段階に差し掛かるレイターステージを対象にした総額200億円のグロースファンド「THE FUND」を設立しました。

「ポストIPOスタートアップ」も重要 

また、メガベンチャーが育つ土壌づくりという観点では、スタートアップがしっかり社会に根付くように、社会全体の信任を得ていくことも大事だと思います。社会からスタートアップがいてよかったという評価をされなければいけません。最近、IPO(新規株式公開)する企業も増えてきましたが、それだけでは足りません。

IPO後も、精力的に発展を遂げようとする意志を持った、力強く伸びていく「ポストIPOスタートアップ」企業が多く出てくると、「スタートアップが産業を創出している」という社会からの信任を得られます。世の中にインパクトを与える、シンボルになるようなスタートアップを輩出していくことが重要だと思います。

大櫃直人(以下、大櫃):銀行も、スタートアップにおけるビジネスモデルの変化に対応したリスクの取り方をしていく必要があると考えています。従来は、企業が大きな設備投資をして3~5年で償却するという事例が多かったが、最近では、企業が製品の認知度を高めるための広告宣伝費や製品の質向上のためのIT(情報技術)投資に資金投下し、長期的に投資回収するケースが増えています。

こうした事例に対して、銀行としてリスクを取れるようにしていかないといけないと思っています。そうしなければ、米アマゾンのような世の中にインパクトを与える、シンボルになる企業が日本から生まれてきませんから。

例えば、家計簿アプリやクラウド会計ソフトを手がけるマネーフォワードは、IPO後も赤字を掘り続けて成長に向けた投資をしていますが、投資家、あるいは金融機関と対話をしながら、自分たちの達成したい世界観をつくり始めています。こうした企業に向き合う金融機関になることが、結果的に、時価総額1,000億円を超えるユニコーン企業を輩出する土壌づくりにつながるのではないか、と思っています。

朝倉:スタートアップ企業におけるゼロから1を立ち上げる段階と、1から10、10から100になる段階では、求められる知見は異なります。メガベンチャーになるためには、どれが欠けてもうまくいきませんし、特に10から100の洞察が重要になってきます。

経営者は、こうしたステージの変化に対する柔軟さ、そして、支援してくれる人たちに対するオープンさがあるか、が重要になると思います。それは上場後も同様かもしれません。こうした素養はCFO(最高財務責任者)にも同様に求められるものだと思います。

大櫃:技術革新が進み、成長スピードが速い時代において、企業の組織拡大がついていかない、経営陣の成長がついていかない、あるいは、ステージを上げていくところのギャップを埋められないということが起きています。成長が途中で止まってしまう、鈍化してしまうというスタートアップ企業も多いです。

THE FUNDを運営していくなかで、シニフィアンの3人が、経営者に対して、精緻に事業計画を立てること、将来に備えた組織づくり、人材採用について、早期段階からしっかりと伝えて支援している姿を頼もしく思っています。

一方、金融機関としては、急成長するスタートアップ企業に対して、ガバナンス体制の構築などのサポートをしていきたいと思っています。経営者にとっては耳が痛いかもしれませんが、大事な役割だと思います。

「明るい兆し」出てきている

朝倉:ユニコーン企業の輩出はもちろん、上場後も成長を続ける「ポストIPOスタートアップ」の存在は重要です。スタートアップの社会的意義は、「世の中に現れる新しい課題に対してソリューションを提供し、将来世代に引き継ぐ大きな産業を生み出す」こと、「新しい産業をつくる成長エンジンになる」ことだと思います。「上場できてよかったね」と喜んでいても、成長が止まっては意味がありません。

とはいえ、明るい兆しも出てきています。最近では、マネーフォワードやSansan、freeeといったSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)企業の上場が増えており、自分たちの企業価値の源泉をPL(損益計算書)以外のKPI(重要業績評価指標)を用いて説明しているケースが出始めています。

こうした経営者側の変化に対して、投資家側も短期的な業績を追うだけでなく、企業側の事業に深い理解を持ったうえで将来性を見ていくという姿勢に変わっていく。こうした「良いサイクル」が進んでいくと、上場後の企業にとって、長期的に事業を大きく成長させることにもつながると思います。

大櫃:日本のスタートアップ企業が、ユニコーン企業になるためには、最初から海外市場をしっかりと見据えながら会社を運営していく必要を感じています。現在、みずほ銀行では、東南アジアの新興財閥と、日本の有力、あるいは、エッジの効いた製品・技術を持つスタートアップをつなぐことを積極的に行っています。東南アジアの新興財閥が我々に望んでいることは「大企業」ではなく、「スタートアップ」の紹介です。

そういう意味では、日本のスタートアップにとっては現在、かつてない成長に向けたチャンスがあると言っても過言ではないかもしれません。


小林賢治◎シニフィアン共同代表。東京大学卒業後、コーポレイトディレクションに入社し経営コンサルティングに従事し、ディー・エヌ・エーに入社。取締役・執行役員としてゲーム事業、海外展開、人事、経営企画・IRなどを統括した後、シニフィアンを設立。

村上誠典◎シニフィアン共同代表。東京大学大学院に進学後、宇宙科学研究所(現JAXA)にて「はやぶさ」「イカロス」等の基礎研究を担当。ゴールドマン・サックスに入社後、同東京・ロンドンの投資銀行部門にて14年間にわたり日欧米・新興国等の投資案件、M&A、資金調達業務に従事。

大櫃直人◎みずほ銀行執行役員イノベーション企業支援部長。1988年入行。営業店長や本部業務に従事する中で、M&A・MBO等法人業務を歴任。2016年より現部署、18年執行役員就任。自ら有望ベンチャー企業を精力的に開拓し、成長企業を支援している。

朝倉祐介◎シニフィアン共同代表。競馬騎手養成学校、競走馬育成業務を経て東京大学を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。在学中に設立したネイキッドテクノロジー代表に就任。ミクシィ社への売却後、同社の代表取締役社長兼CEOに就任。スタンフォード大学客員研究員等を経て現職。

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