転職時の基準は人それぞれだ。面白そうだから、人の役に立てるからといった理由に加え、待遇や安定性、自分の成長などいろんな軸があるが、なかなか納得のいく選択をするのは難しい。複数回の転職を経て、「メディアコンテンツファクトリー」(MCF)でシステム開発の仕事に携わる尼崎雄一さんも、その難しさを痛感してきた一人だ。幾つもの壁にぶつかり、心からの挫折を経て、ようやく高校生のときに抱いた「システム開発がやりたい」という夢をかなえた尼崎さんの足取りを尋ねてみた。
システムインテグレーターで味わった圧倒的な「歯車感」
初めてPCに触れたのは小学生のとき、という尼崎さん。PC好きだった父親が購入していたWindows 95マシンがたまたま自宅にあったという。そのころはもっぱらゲーム機として活用するだけだったが、高校生のときのアルバイトで「ITってスゴイな、システムってスゴイな」と感じたことが人生の転機になった。
「宅配ピザのアルバイトで、注文が来て電話番号を入力すると、過去の注文履歴や住所といったお客さまの情報を見られるシステムを見て、スゴイなって思ったんです。それからシステムに興味を持ち始めました。今思えば、エンジニアなら数時間で作れてしまうものですが、当時の僕には分からないことだらけで、興味津々でしたね」
この原体験がきっかけとなって情報系の専門学校に入学し、設計から詳細設計、コーディングといったウオーターフォール型の開発を一通り学んだ。就職先も当然のように、システム開発に携われるシステムインテグレーターを選んだが、今振り返ってみると安易な選択だったという。
「大きくて安定している会社ならいいだろうという思いもあり、独立系の大手システムインテグレーターに就職を決めました。けれど実際に働いてみると、大規模な開発の一部分だけしか任されず、自分がいったいどの部分の作業をしており、その仕事はどんなふうに必要とされているのかが理解できず、『歯車の一部でしかない』という感覚がありました」
当時最も注目を集めていた分野だった携帯電話の開発に携われたのはいいが、担当するのはピンポイントで「通信モジュールのこの部分」といった具合。全体像が把握できず、「自分の役割は何だろう、必要なんだろうか」という思いにさいなまれ、早々に退職を決意した。
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